地球の「いま」の姿にふれ、世界中の人々と交流しながら世界一周の船旅をコーディネートするNGO「ピースボート」。親子で世界を体感したいという声に応えて生まれた、洋上のモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」の代表であり、ご自身も3児のママである小野寺愛さん。中編では、子どもの家が取り入れているモンテッソーリ教育について、幼少期に世界に触れた子どもたちに共通する成長感、子どもの自己肯定感を育む環境についてお話をお伺いいたしました。
≫[前編]先入観や差別心のない子ども時代にこそ世界を見て欲しい
「ピースボート子どもの家」に
モンテッソーリ教育を取り入れたのはどうしてですか?
長女が3~4ヵ月の頃に、AMI/国際モンテッソーリ協会元理事の深津高子さんとお会いする機会がありました。その時に、高子さんが「3ヵ月の子にはコレね」と言って、娘に直径8ミリの持ち手があるガラガラを渡してくださったんです。米国ナバホ族のつくった、銀製のものでした。
正直、まだ3ヵ月だし、おもちゃでは遊べないと思っていたのですが、違いました。娘はそれをちゃんと手に握って、目の前に掲げ、じっと見つめはじめたんです。市販の、パステルカラーのガラガラは、自分で持つことができない時期だったのに。高子さんに聞くと、3ヵ月の子どもだったら、持ち手が8ミリまでで小さく軽いものなら持つことができるし、ガラスや銀など光を受けてきらきらするもの、静かに音が鳴るものが好きなのだということでした。
子どもをきちんと観察し、成長に見合った道具や環境を用意すれば、子どもはイキイキと育つ。大人のプランに子どもを付き合わせるのではなく、子どもにも楽しいかたちで「ピースボート子どもの家」を運営したいと思っていた矢先のことだったので、すぐに高子さんの力、モンテッソーリ教育の力を借りようと思いました。
「子どもから平和を!」と小野寺愛さんが企画した「ピースボート子どもの家」はすんなり受け入れられたのでしょうか?
予算ゼロという条件付きでしたが、すぐやらせてもらえることになりました。予算がないので、モンテッソーリ教育に必要な教具は、全国のモンテッソーリ園に企画書&手紙を出して、譲っていただくことで揃えました。
とはいえ、モンテッソーリ国際免許を持つ保育士2名の渡航費もありますから、第一回目は6人しか子どもが集まらずに赤字。しかし、一回目の渡航の様子をブログで紹介すると、雑誌などで取り上げられる機会が増え、2回目、3回目には10人、4回目からはほぼずっと満席(定員15人)です。
「ピースボート子どもの家」では、2~6歳の未就学児15名の縦割りクラスで、9時~15時までを保育園で過ごします。モンテッソーリ教育では、子どもが主人公。
保育士は子どもたちを観察し、それぞれの興味に合った活動ができるよう環境を用意して、見守ります。ある子は絵を書き、ある子は工作、ある子はみんなのおやつのためのテーブルセッティングをするなど、好きな活動を選ぶのも、いつまで続けるのかを決めるのも子ども自身。
また、子どもサイズの本物の道具がそろえてあることも特徴のひとつです。大人サイズの雑巾は絞れなくても、自分の手にピッタリのサイズのものがあれば、子どもは嬉々として掃除するし、靴だって洗います。 だから、「自分でできる」自信が育つんです。
子どもが保育園で過ごしている時間、親御さんたちは何をされているのですか?
趣味の仲間を募って、特技を生かして教室を開催したり、テーマを決めて語り合ったり。毎日のように開催されている、ファッションショーやダンスショーなどのイベントを楽しんだりさまざまです。また、国内外の専門家らによる船内講座を受ける方もいらっしゃいます。子どもたちが存分に楽しんでいる時間、ママやパパも思いっきり楽しんでもらいます。
ママと参加するお子さんがほとんどですが、毎回1組くらいはパパと参加するお子さんも。そういった方は、転職前や自営業の方が多いですね。