世界の食料の不均衡を“根絶する”ということを目標に「肥満に悩む先進国」と「飢餓で悩む途上国」の問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO(以下、TFT)」。今回は、この7年間で2500万食の学校給食をアフリカの子どもたちに届けてきた同NPO代表で、アジアを代表する社会起業家でもある小暮真久さんにお話をお伺いいたしました。前編では、2児のパパでもある小暮さんの幼少時代から、ご自身の子育て、途上国へ届ける学校給食への想い、グローバル教育観について迫ります。
アフリカの子どもたちに学校給食を支援する「しくみ」を継続可能なビジネスとして成立させ、アジアを代表する社会企業家として活躍する小暮真久さん。どんな子ども時代を過ごされたのでしょう?
小学校に入学するタイミングで、それまで住んでいた東京から静岡へ引っ越しました。
ビルに囲まれていた暮らしが、山や海に囲まれる暮らしに変わったんです。すると、外遊びが大好きになり、山に分け入って虫を追いかけたり、裏山に生っているアケビを採って食べたり、夏はずっと海に潜っていました。
インターナショナルとは真逆のドメスティックな幼少期でしたが、都会から田舎への“劇的な環境の変化”で、僕はそれまでの「いい子」から「自分が納得しない事には従わない子」へと、本来の性格を発揮するようになります。
大人もそうですが、子どもは特に、違う環境に身を置くと「自分が出る」んです。僕は小学校の6年間を静岡で過ごしましたが、たとえ短期であっても「ここ以外のどこか」だったらどこでもいい。子どもが「本来の自分」を発揮できる環境を探って、さまざまな環境を体験させることは、親が子どもにできる重要な教育のひとつだと思います。
3歳と1歳になるふたりのお子さんのパパでもある小暮さん。ご自身のお子さんたちへの「グローバル教育」はどのように考えていますか?
今のグローバル教育は、アメリカをはじめとする先進国の方しか向いていません。アフリカなどの開発途上国の方を見ていない。つまりは、世界の半分しか見てないことになります。
世界には、貧困や格差、紛争やテロなどの課題が山ほどあるにもかかわらず、グローバル教育の目指すところが、先進国にしか向いていないから、そういった地球規模の社会問題を解決する日本人が育ちません。
僕は自分の子どもたちを「TABLE FOR TWO」の支援先である開発途上国に連れて行って、現状を見せることができますし、積極的にそうしたいと思っています。
今の日本の教育は、開発途上国の現状や地球規模の社会問題を取り上げません。子どもたちがそれを知って、問題意識を持ち、自分にはなにが出来るかと考える機会がないんです。
だからこそ、私たち親は、学校では教えてもらえない「グローバル教育」をする必要があるのではないでしょうか。子どもに「アフリカという国には、一日一食も満足に食べられない子がいるんだよ」と教えると、たった3歳の子どもでも「わけてあげる」とか「(自分の食事を)のこさないで食べる」などと、スッと事を理解して、考え得る解決策を口にします。
開発途上国に連れて行って、現状を見せることができなくても、世界で起こっている矛盾や歪みは、親から子へと伝えることができる。それを伝え、子どもに「考える機会」を与えることが、真のグローバル教育だと思います。