親御さんも現地コミュニティーに積極的に関わって
親子留学に行くと、子どもだけが現地で一生懸命学び、奮闘している一方で、ママは日本人ママだけのコミュニティーで集まって、日々を過ごしているケースもみかけます。園や学校の懇談会があっても、現地の方のコミュニティーの中に入らずに静かにしている方もいらっしゃいますが、これは少し残念だと感じています。
言語を修得していない(する気がない)親御様に連れられてきたお子さまが、結果的に、語学が堪能になり、親御さんの通訳をしているなんていうケースも見受けられます。
これでは、現地コミュニティーでスムーズなコミュニケーションが取りにくくなってしまいますし、現地でお子さんだけが孤軍奮闘している状態に。お子さまの気持ちを考えると、少し可愛そうだなと思います。
子どもは親御さんの背中を見て育ちます。親子留学されるのであれば、ぜひ、親御さんも、現地のコミュニティーに積極的に関わって、自分のスキルや能力も現地で伸ばすつもりで「親子留学」にチャレンジしてみていただきたいですね。それでこそ、真の意味の「親子留学」ではないでしょうか。
「リンガフランカ」としての英語を学ぼう!
少し専門的な内容ですが、日本の英語教育と言語を教えることについてお話してみましょう。
Englishes
- ESL(English as a Second language/第二言語としての英語)
- EFL(English as a Foreign Language/外国語としての英語)
- EIL(English as an International Language. English as a Global Language/国際語としての英語)
- ELF(English as a Lingua Franca/英語を母語としない人への英語教育)
1番目のESLは、アメリカやイギリスなどの英語国で英語を学ぶ環境での英語。教室の中でも外でも、英語がコミュニケーションの手段として使われます。
一方、現在、日本の英語教育は2番目のEFLです。EFLは教室の中でしか英語が使えない環境であり、今の日本の英語教育の難しさはこのEFL環境にあると言われています。
また、次の3番目のEILというのはネイティブスピーカー至上主義的なところがあると言われています。「英語を使って皆が会話するようになって、ノンネイティブの日本人も英語をはなしていて偉いね」というニュアンスです。英語を母国語とする人たちからの上から目線の教授法です。
現在、世界の英語人口は約15億人! 日常的に英語を使う人の約8割がノンネイティブなのです。
4番目のELF。世界中のみんなが“共通語”として使っているインフラ言語としての英語、つまり「リンガフランカ」(=母語が共通でない人同士のコミュニケーション手段として使われる言語)として、英語を学んでいくことが重要と注目されています。
英語の先生がリンガフランカとしての英語を教えることの重要性
例えば、言語が違うドイツ人と韓国人同士は、母国語ではコミュニケーションを取ることができないけれど、英語という共通語があるからこそコミュニケーションが可能になるということです。
また、世界の英語教師の80%はノンネイティブです(※2)。よって、教育業界ではネイティブスピーカー至上主義ではなく、リンガフランカとしての英語教育を推進していこうということが主流になりつつあります。
なので、日本でも、英語のノンネイティブスピーカーである日本の先生が、しっかりとリンガフランカとしての英語を教え、伝えることが大事だと考えます。
現在、リンガフランカとしての英語教授法を、英語教師となる学生達に教えているのですが、大学のゼミなどで、『英語を教えるって言うことはどういうことなのか』ということを常に学生達に問うています。
私自身、教えるということは、教科内容を学習者に伝えながら支えることなのではないかと思っています。
学習がうまくいくように促し、環境を整え、アクティビティーをし、説明をするなどしながら学習者の学びを支えるのが教師の仕事。母国語は教えなくても身につきますが、母語の学習プロセスと同様に、人はわざわざ教えるということをしなくても、言語を学んでいくのですよということを伝えています。
※2: Braine, G. (2010). Nonnative speaker English teachers: Research, pedagogy, and professional growth. New York & London: Routledge.