山本香織 さん – イラストレーター、グラフィックデザイナー Vol.11
私たちが育った時代とは大きく違う、子ども達の未来の時代。どんな社会が待っていようとも、柔軟に対応できるベースを作ってあげたい − 山本香織
Global+Learning=Glolea![グローリア]。世界とポジティブにつながる今と未来のためにお子様とともに学び続ける、素敵なGlolea!なママにフォーカスするインタビュー。今回は、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてご活躍中の 山本香織 さんにお話をお伺いしました。
1976年生まれ。大阪出身。長野県松本市在住。15歳の時、サンフランシスコ郊外で短期ホームステイを体験。その後アメリカの公立高校で1年間の交換留学生生活を送る。日本の高校を卒業後、再び渡米。カリフォルニア州サンタモニカカレッジに入学し、グラフィックデザインを学ぶ。帰国後、広告制作会社(大阪・東京)にてデザイナーとして勤務。結婚を機に、シリア・アラブ共和国へ約3年間滞在する。これまで旅した国は約20ヶ国。2012年4月より一目惚れした松本市へ家族で移住。長女:5歳。
−− 山本香織 さん流のGlolea!な生き方、子育てスタイル(=世界とポジティブにつながり子どもと共に学び合う子育てスタイル)や、想いがあれば教えてください
山本香織 さん(以下敬称略):
私が初めて世界へ飛び出したのは15歳の時。春休みを利用して2週間の短期ホームステイプログラムに参加したのが始まりです。
その時に体感した世界の広さ、異文化の面白さに魅了され、その後も交換留学生として再びアメリカへ戻り、またグラフィックデザインを学ぶためにアメリカの大学を選択するなど、日本とアメリカを行き来する学生時代を過ごしました。
穏やかで心優しいシリアの人々に助けられた3年間
中東シリアでの暮らしから学んだこと、感じたこと
9.11の半年後、結婚を機に夫の仕事の関係で中東のシリアへ渡りました。初めて触れるイスラームの社会は、人生の中で最も大きなカルチャーショックを受けた時期かもしれません。
シリアの人々は穏やかでとてもシャイ。同時に深い親切心を持ち合わせていて、右も左も分からなかった私たちは何度も彼らに助けられました。その後、隣国イラクで戦争が始まると、日本から届く私たちを心配する家族や友人の声と、目の前にいる心温かいシリア人との間に、強い違和感を感じ始めました。
少しでも本当の彼らの姿を伝えたいと、シリアでの日常をイラストに描き、日本で個展を開きました。約3年間暮らしたシリアでの経験は、日本とも西洋とも違う視点からの社会のあり方や価値観を、しっかりと私に教えてくれたのでした。
私自身のこうした経験から、娘に伝えていきたいなというメッセージは
世界は広い。常識は1つじゃない
ということ。この地球には様々なバックグラウンドを持つ人々が暮らしていて、私たちはその一部。そういう視野で世界を捉え、自分の置かれた立場を俯瞰で見つめられるような、そんなベース作りをしてあげたいなと思っています。
親子で世界各国に暮らすように旅をしながら
“擬似居住体験”を楽しんでいます
−−お子様の語学力アップや、異文化コミュニケーション力UPのために山本さんがされていることはありますか
山本: 意識的に実践していることは3つあります。
1つ目は、娘を異文化へ連れ出すこと。海外へ行く機会を積極的に作り、娘を連れて行くようにしています。その時に大切にしているのは「疑似居住体験」の実践。
娘が1歳の時にハワイ、2歳の時にはニュージーランドへ、それぞれ1ヶ月、3歳の時にはタイに2週間ほど滞在しました。
ホテルではなく、キッチン付きの家やアパートにステイし、暮らすように滞在します。完全オフではなく、私も夫も多少の仕事も持ち込んで、スーパーやマーケットで食材を買い出し、お料理し、いつもの毎日を過ごす。子どもにとっても日常生活の延長にある常識の違いは、何の抵抗もなく、すんなりと受け入れ、吸収していくのを感じます。
娘が3歳を過ぎてから一緒に出かけた台湾やマレーシア、タイなどアジアの国々では、それぞれ電車や地下鉄の乗り方、トイレのマナー、そんな違いが国によってあることを自ら学びました。
英語だけではない言語の存在にも気づきました。小さなことですが、その積み重ねが「違って当たり前」を作るのかなと思っています。
芸術・スポーツ・アウトドア…
言語を越えるスキルを共に磨いていきたいです
2つ目は、言語を越えるスキルを磨くこと。例えば音楽や芸術、スポーツ、アウトドア経験など。私自身、英語もまだほとんど話せなかった交換留学の最初の頃、得意だった絵を描くことで、ホストファミリーや高校の友人達とスムーズにコミュニケーションが取れた体験をしています。言語を越えた能力で人と繋がることは、とても素敵なことです。そのスキルは海外に出た時、本人の自信に繋がります。
娘が今習っているのは身体作りの基礎となるスイミング。泳ぐことに苦手意識を持たないことで、海というフィールドへの入り口になればとの思いもあります。他には私の得意分野でもある絵を描くことや、手を動かして何かを作り出す工作などは積極的に取り組んでいます。写真を撮ることも好きなので、デジタル一眼レフを渡して、写真の撮り方を教えることもあります。今回の私のプロフィール写真も、娘が撮ってくれたものです。
また、親が楽しんでいる姿は何よりも大きな影響を与えるという思いから、ずっと挑戦したかったクラシックギターとウクレレを私が習い始め、娘がいる時間帯にリビングで練習しています。そうすると、娘も見よう見まねでウクレレを手にしたり、おもちゃのピアノで参加したり、音楽が暮らしに溶け込むようになりました。本人が自ら興味を持った段階で、音楽も学び始められたらと思っています。
自然との距離感が近い長野県松本市へ移住。自然を愛する心を穏やかに育んでいます
自然との距離感や街の雰囲気に魅了され、私たちは3年前に長野県松本市へ拠点を移しました。
毎夏、山を歩いたり、キャンプに出かけたり、積極的にアウトドアで過ごす時間を取るようにしています。初めての上高地キャンプでは、満天の星空の迫力に娘と共に息をのみました。
テントで過ごす夜の静けさ、朝日の暖かさ、言葉にはできない自然の素晴らしさや偉大さを肌感覚で知っていることは、自然を愛する人同士であれば、言語を越えてわかり合える共通体験となるのでは、と考えています。
娘が興味を持ち始めた「相撲」「落語」を皮切りに、
楽しみながら日本文化を学んで欲しい
3つ目は、日本の文化に触れること。いつの頃からか娘は大相撲が大好きになり、今では好きな力士の出身地や所属部屋まで覚えているほど。
海外に出ると、日本のことを聞かれる機会が数多くあります。日本に暮らし、日本の文化に大いに触れるチャンスがあるのだから、楽しみながら沢山のことを吸収して欲しいなと思っています。
最近娘は少しずつ、落語を面白がり始めているので、子ども向けの落語絵本を読み聞かせています。日本語ネイティブだからこそ学べる日本文化をよく知っておくことが、結果的には異文化コミュニケーションに役立つのではないでしょうか。
ホストファミリーにトライしてみたいと思っています
−−Glolea!なママである、山本香織さんが最近注目しているサービスやグッズはありますか?
山本:新しいことではありませんが、娘がもう少し大きくなったら、ホストファミリーをやってみたいと思っています。
夫も私も、高校時代の留学経験を通して生涯のお付き合いとなるホストファミリーに出会いました。今も娘にクリスマスプレゼントやバースデープレゼントが届きます。この関係に感謝しながら、私もいつか同じことを娘にしてあげたい、と思うようになりました。
ホストシスターと共に暮らすことで、娘にとっても世界が大きく違って見えることだと思います!
私達が移住した長野県・松本市は海外からの旅行者も多い街。BBCを通じて交流を増やし深めたい
山本:この春、私の暮らす松本の街で「Matsumoto BBC」というプロジェクトを夫と一緒に立ち上げました。
BBCとは、Books、Breakfast、そしてCoffeeの略。朝の光が気持ちよく差し込むカフェで、美味しい珈琲と朝ごはんを頂きながら、シェアするに値する本を紹介し合うというものです。
松本という街は、日本国内からはもちろんのこと、海外からの旅行者もとても多い街。今後は旅行者の方々にも参加してもらえたら、面白い交流が生まれるではないかなと考えています。
家事効率化ツール「リセッターリスト」をひろめるプロジェクトも開始しました!
また、昨年夏から「リセッターリスト」という家事の効率化ツールを広める活動もしています。自分の体験から生まれたツールですが、仕事に子育てに忙しいママ達が、スキルアップなどの時間を捻出できるよう、家事を効率的に進めるためのものです。
家事をアウトソーシングするほどではないけど、うまく回せてない感がある…そんなママ達にオススメしています。やらなきゃいけない家事を最低限に抑え、取り組みたいプロジェクトに全力で向かう、そんな気持ちをサポートできたらと思っています。
いつか単身で海外に飛び出し、日本人である自分が「マイノリティ」となる体験を味わってもらいたい
−−山本さんが今、チャレンジしていることもしくは、これからトライしてみたいことはありますか?
山本:引き続き、チャンスを見つけて娘と一緒にいろんな国へ出かけて行きたいと思います。様々なカルチャーに触れ、一緒に驚き、一緒にワクワクする。そんな体験を繰り返すことが、彼女の将来の選択肢を広げることに繋がればいいなと思っています。
そしてある年齢を越えたら、親元を離れ、単身で海外へ飛び出す体験をして欲しい。そして日本人である自分が「マイノリティ」となる体験をして欲しい。
言語的にもカルチャー的にも圧倒的に不利な立場に立って暮らすことから得られる経験は、計り知れない大きな宝物となります。将来、どんな生き方を選択しようとも、そこで得た経験は彼女の底力となると考えています。
−−Glolea![グローリア]読者のママ達へのメッセージをおねがいします。
山本:私たちが育った時代とは大きく違う、子ども達の未来の時代。どんな社会が待っていようとも、柔軟に対応できるベースを作ってあげたいですね。
ママ達もこの先の未来をワクワクしながら描き、楽しみながら一緒に成長できるような、そんな子育てライフを送っていけたらと思います!