今村優莉さん – 朝日新聞国際報道部記者 Vol.23
「“違い”を面白いと思えるようになれれば、人生はもっと豊かに」 − 今村優莉
Global+Learning=Glolea![グローリア]。世界とポジティブにつながる今と未来のためにお子様とともに学び続ける、素敵なGlolea!なママにフォーカスするインタビュー。今回は、朝日新聞国際報道部記者であり、世界のいまを伝えるウェブメディア朝日新聞GLOBE+での連載「育休ママの挑戦~赤ちゃん連れ留学体験記~」も好評なGlolea!なママ 今村優莉 さんにお話をお伺いしました。
Profile: 今村優莉 (Yuri Imamura)さん
東京都生まれ。母は中国人、父は日本人。小学校、大学の計10年を北京市で過ごす。2005年に北京大学を卒業し、朝日新聞社に入社。さいたま、宮崎の両総局、東京社会部などを経て現在は国際報道部。2017年~18年に出産し、年子の母に。育休中に執筆した、中国人の祖母の視点で中国現代史を描いた「ラオラオ~波乱の中国を生き抜いた祖母の記憶」が第25回小学館ノンフィクション大賞の最終候補に。18年9月から計半年間、セブとニュージーランドで親子留学し、朝日新聞GLOBE+で連載中。NZでスキューバダイビングのライセンスを取得。長男2歳半、次男1歳4カ月(現在)。
子育てで心がけていることは「他の人と比べない」ことと「できるだけたくさん抱きしめる」こと
−− 今村優莉さん流のGlolea!な生き方、子育てスタイル(=世界とポジティブにつながり子供と共に学び合う子育てスタイル)や、想いがあれば教えてください
今村優莉 さん(以下敬称略):
子育てで心がけていることは「他の人と比べない」ことです。
自分のことも子供のことも子育てについても他と比べるとしんどくなるだけですから「彼らなりの成長をゆっくり見守る」ことは私の子育てにおいて大切にしていることの一つです。
もう一つ。「できるだけたくさん抱きしめる」ことも心がけています。たとえ怒ったりイライラしたりした日でも、必ず最後はギューーッと抱きしめてあげるんです。そうすれば愛情はきっと伝わりますし、私自身も癒されて、明日も頑張ろうと思えるんです。
よく「抱き癖がつくから」と、泣いても抱っこしない人がいると聞いたことがありますが、私からすれば、大きくなったら抱っこもできなくなるわけですから、今のうちにたくさん抱きしめておこうと思っています。
実母のように私も「よく笑って楽しそうに生きる母ちゃん」でありたいと思っています
ちなみに、私の母親はとにかく厳しく、大声で怒鳴られたりスリッパが飛んできたり、宿題が終わらなければ絶対に友達と遊んではいけない、などその権力は絶大でした。
…中国人のスパルタ母親を指していう“ Tiger Mother ”の典型のような人でした。
ただ、母はとにかくよく笑いいつも楽しそうにしていたし、どんなに怒られても最後は必ず抱きしめて
ママの最大の宝物だからね
と(中国語で)言われていたので、母の厳しさにも耐えることが出来ました。
だから私も「よく笑って楽しそうに生きる母ちゃん」でありたいと思っています。そのためにはまずは私自身がストレスをなるべく抱えないことが大事だと思っています。
育休利用して0歳&1歳の年子の息子達を連れてセブ&ニュージーランド「ママ留学」にチャレンジ!
−− 今村さんは育休期間を利用して2カ国の親子留学にチャレンジされたとお伺いしました
今村:はい、当時1歳5カ月の長男と、生後3カ月の次男を連れて、私の語学留学が主目的である“ママ留学”としてセブ&ニュージーランド親子留学にチャレンジしました。
育休中の親子留学を決めた時「育児休業中なのに留学なんてして批判されないか…」という懸念がありましたが
私が好きなことをしながら子育てするのがみんなにとって一番いいことだ
と自分にも周囲にも言い聞かせて敢行しました。
息子達には「世界のどこででも生きていける人間」。ようするに“食っていける人”になってほしいと思っています。
そのための能力をつける環境を整えるのが親としての役割だと心がけています。
それもあり、生まれた直後から色々な人達と接する機会を与えてきました。
要するに、いろんな人に預けまくっていたということなんですが…おかげで長男も次男も、「人見知り」という言葉とは無縁にどこに連れて行っても楽しそうに過ごしてくれています。
長男が生後半年を迎えると、石垣島やプラハやウィーンを旅行しました。
“ナニジン”という垣根を超えて「ひと 対 ひと」として誠実に向き合えるような子供に育ってほしい
−− 年子のお子様との子連れ旅行はご苦労もあるかと思うのですが
今村:確かに年子の2人連れですので外に出るだけでも一苦労です。
しかし、
行動範囲が狭まることでストレスを抱えるくらいなら、多少疲れても一歩出よう、違う空気に触れてみよう! 触れさせよう!
と思い、積極的に海外も国内旅行もしています。
…もちろん、子連れ旅行は本当に疲れますが、国内外の旅経験を通じて日本人とかナニジンとかいう垣根を越えて、どこの国のどんな人とも「ひと対ひと」として誠実に向き合えるような子供に育ってほしいと思っています。
インターネット動画サービス「YouTube」や「Netflix」を大活用して親子で英語を楽しんでいます
−−お子様の語学力アップや、異文化コミュニケーション力UPのために今村さんがされていることはありますか
今村:家ではもともと子供達に中国語で話しかけていました。私の「母語」だったので、そちらの方が私が話しやすかったからです。
親子留学から戻ってからはそこに英語が加わりました。
YouTubeで英語の歌を流したり、Netflix で「ボス・ベイビー」というアメリカのアニメを一緒に観たりしています。
特に「ボス・ベイビー」は子供向けの番組ではないのではないかと思うほど深いメッセージが込められていることもあり、私も大好き。
「ボス・ベイビー」を字幕なしで一発で理解できるくらいに上達したいと思いながら観ています。
子供達は保育園で日本語を話すので、ちゃんぽん過ぎるかなあと思うこともありますが、スポンジのような赤ちゃんの脳と耳の良さを信じて、日中英の3カ国語育児にトライ中です。
また、YouTubeの英語の歌は、子供となるべく一緒に歌うようにしています。
例えば、人気のYoutubeのチャンネルで、英語圏で定番の童謡や子守唄(Nursery Rhymes)などをオリジナルの動画で提供するCocomelon – Nursery Rhymes(旧称 ABCkidTV )。
最近ですと、アリとキリギリスのお話を英語の歌にした「The Ant and the Grasshopper」や、「お願いする時にはなんて言うの?」「人に何かしてもらったらなんて言うの?」というテーマ設定の「Please and Thank You Song」なんかを見ています。こちらは手話入りなので、英語だけでなく手話も学べます。
また、ベッドでぴょんぴょんはねる5匹の猿が、1匹ずつ落ちて数が減っていく「Five Little Monkeys Jumping on the Bed」という歌もお気に入りです。
猿の部分をパンダやカエルなどの他の動物を入れて歌ったり、夜、寝る前にベッドでぴょんぴょんはねる子供の名前を入れて歌ったりして子供と英語時間を楽しんでいます。
子供向けの歌だからといって侮れません。
歌には過去分詞や日常生活で使える言い回しも入っているので、さりげなく使えるようになったり、繰り返し動画を観ながら子供と一緒に歌っているうちに知らない単語も覚えられるので一石二鳥です。
また、最近のYouTubeチャンネルの中にはパパとママの役割に性差をつけないように工夫してあったり、「お友達」のなかに様々な人種の子供達が一緒に遊んでいる様子が入っているなど、時代にあわせたアップデートがされていて、よく出来ているなあといつも思います。
同じチャンネルで紹介されている「Skidamarink」という童謡。
朝から晩までずっと大好きだよ
というメッセージの歌の中では登場するパパとママは完全に家事を分担しています。
▲海外や日本のインターナショナルプリスクール、キンダーガーテンでもおなじみの英語の遊び歌「Hello Song」
同じく、Cocomelonチャンネルで公開されている「Hello Song」の動画内には保育園で色々なお友達に会って挨拶する映像の中に出身地も肌の色もさまざまなお友達が登場します。
小さい頃から無意識にこうした多様性に触れることは大事だなと思います。
多言語交流の会員制クラブのサークル活動に参加したり英会話カフェを楽しんでいます!
−−Glolea!なママである、今村さんが最近注目しているサービスはありますか?
今村:親子で多言語の国際交流を楽しめる「ヒッポファミリークラブ」に注目しています。
「ヒッポファミリークラブ」は中国や台湾、韓国やイタリア、スペイン…など、様々な国や地域の人達や、留学・滞在経験者らでつくる多言語国際交流の会員制クラブで様々な言語で歌を歌ったり、話をしたりします。
会員になるほど通える自信がなく…まだサークル活動に2回ほど「体験」で参加させてもらっただけですが、ものすごく楽しかったです。
下の子供が自分で歩けるくらいになったら、会員になろうかなあと考えています!
また、「英会話カフェ&バー LanCul」にも注目しています。
「英会話カフェ&バー LanCul」はご両親の都合で小さい頃に日本に来た中国人の青年が、言葉の問題で日本の学校になじめなかったりつらい思いをした自身の体験から作った『会話型』のカフェです。
教科書もスケジュールもなく、予約もいらない。
教室ではなくカフェで、ドリンクを片手に英語だけでコミュニケーションをする新しいタイプの英語学習場です。
私はここの会員になってまもなく5年になるのですが、当時は2店舗だったのが、口コミで評判が広がり、今や都内を中心に20店舗にまで拡大。
長男が生まれた後も、抱っこして通っていました。子供が2人になってからは、夫に子供をみてもらえる週末に自分の息抜きタイムとして通っています。
若年女性への支援を今後も継続的に行っていきたいです
−−今村さんが今、チャレンジしていることはありますか?
今村:現在、本を書いています。
中国人の祖母が体験した日中戦争や中国の内戦、文化大革命といった中国の現代史を祖母の目線から振り返るノンフィクション小説を執筆中で、取材に取りかかり始めてから、かれこれ10年くらいかかっていますが、まだ終わっていません。
本業が記者なので、これは成し遂げたいことの一つです。執筆することは生きる糧でもあります。
生きる術がギュッと詰まっているキャンプ! いつか親子でキャンピングカーで各国を巡る旅を楽しみたい
−−今後、お子様と共に世界とどのようにポジティブにつながっていきたいですか? お子様との将来の夢などお聞かせください。
今村:子供が5歳と4歳になったら、キャンプに行きたいです。
なぜその年齢かというと…自分でお手洗いができるようになり、また、記憶も残る頃ですので、キャンプ経験が無駄にならないかな、と。
また、野望としては資金があったら色々な国をキャンピングカーで巡りたいです!
私は姉妹だったので、キャンプの経験がなく、憧れがあります。
キャンプって、生きる術がギュッと詰まっていると言われるじゃないですか。
私が親子留学で訪れたニュージーランドはキャンプが盛んで、特に私達が過ごしたフィティアンガという町は、ほとんどの家がキャンピングカーを持っていました。
フィティアンガの子供達は、10歳や12歳くらいなのに、とても自立しているんです、考え方が。小さな子供の面倒も見るし、親や地域のおじさんおばさん、先生のことも大事にする。
私なんて、その年齢の頃は自分のことしか考えてなかったよなあ…と思うと、我が子もこのように自立した子供に育ってほしいなと思ったのです。
で、夢は、子供が16歳になったら
お母さん、僕はどこどこの国でどんなことをしたいから家を出て勉強したい!
と言えるようになるくらい、精神的に自立して育ってくれたら親としては本望かなと思っています。
きっとうれしさ半分、寂しさ半分だと思いますが…。
その「どこの国」というのは、もちろん日本でも良いですが、子供達には自分の夢や進む道を自分で切り開いてほしいなと思っています。
そのために、世界は広いんだぞと教えるために、一度は海外留学を短期でも長期でも経験させたいです。だから仕事は辞められないです(笑)
日本でも海外でもどこでもいい
まずは「外に出てみよう」と思うことが大事だと思います
−−Glolea![グローリア]読者のママ達へのメッセージをおねがいします。
今村:私はいつも、日本を離れると、日本の良さを実感して「早く帰りたーい」と思うんです。長く居すぎると「そろそろどっか旅したい」とも思いますが。離れてみると、元いた場所をより客観的にみることが出来るというのは良いことかなと思います。
GlobalなLearningは、何も海外にいなくては出来ないことはないと思いますが、まずは「外に出てみよう」と思うことが大事だと思っています。
「外」というのは自分の住む都道府県の外、でも良いと思います。
普段自分が過ごすエリアと違うところに行くと、それだけで違う文化があり、方言があり、考え方があり、コミュニティがある。
そういう「違い」を面白いと思えるようになれれば、人生はもっと豊かになるんじゃないかと思います。
子育ては本当に大変で、しんどい。
そんなこと考えるヒマもないほどめまぐるしく日々は過ぎるのですが、小さな一歩、大きな世界。
こんな子供になってほしいな、こんな親子になりたいな、と妄想を膨らませると、楽しいですよ!
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