魔法のシュタイナー幼稚園@アメリカ・ワシントンD.C.
- 春名聡子(Akiko Haruna)
- Glolea! 国境を越えたホリスティックな学びのアンバサダー
こんにちは。日本では梅が咲き誇り、小春日和を楽しまれる日々をお過ごしでしょうか。国境を越えたホリスティックな学びのアンバサダーの春名聡子です。
目次
ワシントンDCにある豊かな森のキンダーガーテン
待ちに待った雪融けが始まったアメリカの首都、ワシントンDC。渓流が流れ静かな森の中にある、魔法の国のようなキンダーガーテンを訪問しました!
ここの哲学は、一言で言うと、
“美しい”教育
子どもを型にはめて行く教育との対極にある教育です。
幼い子ども達に、知識の詰め込み・過剰な刺激は一切なし。
人間性と子どもの可能性を花のつぼみが開くように育てるシュタイナー幼稚園
アメとムチ方式のしつけもなし。夢の世界で繊細な感性を優しく育てながら、人間性と可能性を花のつぼみが開くように育てている、素敵な幼稚園です。
この幼稚園は、昨年秋に訪れたニューメキシコ州の学校と同様、シュタイナー教育※1に基づいて50年間の運営歴を持つ幼稚園です。
※1:シュタイナースクール:
ドイツ人のルドルフ・シュタイナーが1920年代に提唱した、知性だけでなく、心、体、精神といった子どもの全体性を重視した教育方法に基づく教育システム。日本を始め、世界各地に拡大中。
歌声に誘われるように、しつけを身につける子ども達
建物を一歩入ると、飛び込んでくるのが、うっとりするように美しい色彩で彩られた壁、インテリア、美しいカーブを描いた木の家具。
木の切り株があちこちに点在し、植物、陶器、フェルトで作られた優しいかたちの手作りおもちゃ達。夢の国にいるようです。
プラスチックのおもちゃ、べったりした原色の素材、コンピューター・ゲーム類は意図的に置かれていません。幼稚園の“本来自然と一体である子どものせかい”に隅々までこだわった心配りが、全身に伝わって来る空間です。
この学校で12年、生徒を教えて来たダイアン先生のクラスを見学しました。
第一印象は
女優さんのように表現力のある人!
そう、シュタイナー学校の先生がたは、感受性がとても繊細で愛情深い人達です。
優しい歌に導かれて子ども達は自然にしつけやルールを学んで行きます
ライアーは、子どもの繊細な感性に働きかけるために、 シュタイナー教育で使われている楽器です。その音階は日本の琴にもよく似ています。シュタイナー教育では、単刀直入なC音階とF音階は使わない事にしているそうです。
ここで、驚いた事がありました。
普通の学校では
はいみんな○○しましょうね〜
などと、先生から子どもへの「指示」を耳にしますよね?
ダイアン先生は、ほぼ全ての指示が、子守唄のように優しいメロディーの「歌」なんです♪ 子ども達も楽しんで一緒に歌を歌います。押し付けず、優しくうながす歌声に誘われるように、子ども達は自然にしつけやルールを学んで行くのです。
例:おかたづけソング
♪It’s time to put the toys away (おもちゃを片付ける時間ですよ)
♪Tomorrow is another day (また明日、あそびましょう)
ダイアン先生がこの優しい歌を歌うと、子ども達は「指示」されずして、まさに魔法に誘われるように、自然に、おもちゃのお片づけ、掃除道具を持って床のクリーニング、を自分たちで始めていくのです。
やさしい歌はあらゆるところで、先生と子どもの口から歌われます。自然素材・手作りの人形でできた人形劇の、はじまりの歌。全員参加型のケーキ作りの時に、美味しいケーキができるようにと魔法のうた。
♪Wash your hand
歌によって、手を洗うといった日常の所作が、楽しく素敵なことに変身します。アートの力を重視するシュタイナー教育ならではといえましょう。
先生の声が美しい事もあいまって、見学中、終始メアリーポピンズのような、夢の国のミュージカルを見ている気分でした。
詰め込まずに、自然に花開かせる
想像の世界を大切にするシュタイナー教育を受けた子どもは、みんなアーティストになるのかというと、子どものその後はバランスの取れたものになっています。
アメリカのシュタイナー学校卒業生の半数近くが大学で科学を専攻、また卒業生の半数以上が大学院に進学しています※2
※2:Association of waldorf schools of north americaの統計による
最近の幼児教育のトレンドには、早くから文字・算数・科学などを教える。コンピューター教育。というものがあります。
一方で、シュタイナー教育が指摘するように、本来、幼い子どもの感性は天使の羽のように繊細なもの、まだ夢と魔法の世界に住んでいる年齢。
身体の動きも集中力も流れるようにつどつど変化していき、固定した椅子にがちっと座って学ぶ、というカタチに馴染まない性質があります。
子育てのゴールは将来の競争に勝つためなのか?
子育ての哲学は家庭・学校それぞれで多様であってしかりです。
しかし、子どもを、オトナの“現実界”にはやく馴染ませたり、将来の競争に勝てる子どもに早くから育てようとしたり、身体・心・精神・知能全体の統合性よりは、知能の発達を最大化させようという意図があるとすると、むしろ、子どもという段階の自然な成長をフルに遂げる事と、矛盾を起こすかもしれません。
オトナとは異なる子どもの世界を壊さないように大切にサポートしてあげ、伸び伸びと感受性と人間としての成長を育んで行く。
その中で、子どもはオトナへの道を歩み出して行く事ができる、のではないでしょうか。
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 春名聡子(Akiko Haruna)
- Glolea! 国境を越えたホリスティックな学びのアンバサダー
- ワシントンDC
2008−16年まで北米在住。2015−16年北米ワシントンDCで夏のホリスティックな親子留学プログラム「グローバルコンシャス」を主宰。北米・中米・アフリカなど各地の自然に足を運んだ経験を活かし、現在、人と自然をつなげるジャーニー・ワークショップのプログラムForest Beats -森の鼓動-を運営。