世界の共通語はブロークンイングリッシュだ! ー 会議通訳者 岩瀬かずみさんインタビュー

枝廣綾子(Ayako Edahiro)
Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー

皆様こんにちは! 認定NPO法人パンゲア理事/Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー枝廣綾子です。世界の子ども達が言葉、距離、文化の違いの壁を乗り越えて、個人的なつながりを感じることの出来る遊び場「ユニバーサル・プレイグラウンド」を構築しているパンゲアの活動。連載11回目の今回は、ボランティアでパンゲアのニュースレターの翻訳などもして下さっている、会議通訳者・岩瀬かずみさんのインタビューです。

英語が話せなくても世界でコミュニケーションが出来るこれからの時代に大切なこととは、多様性を理解し受け入れ、自分を伝え、相手を理解するコミュニケーション能力 −− 岩瀬かずみ

岩瀬かずみ さん

プロフィール
岩瀬かずみ/会議通訳者

東京女子大学卒業後、文芸翻訳者を目指すが、生計を立てていくことが難しく、国際特許事務所で特許明細書翻訳業務を行う。のちに某携帯電話会社の立ち上げに際し日本参入した米国企業の社内通訳を経て、独立。フリーランス通訳者となる。企業や政府関係の会議、セミナー等の通訳に加え、イベントやテレビ番組等エンターティンメント系の仕事も多い。スポーツ国際親善試合のスタジアムMCを含め、バイリンガルMCとしても活動している。長男は高校1年生の15歳。

 

岩瀬かずみさん(以下、敬称略)

普段、会議通訳者として仕事をしているのですが、パンゲアの翻訳ボランティアを始めて今年で3年になります。

 

義務教育下のこどもたちが、家庭と学校という限られた場所で世界観を築いていることに疑問を感じており、言語と時間・空間の障壁を乗り越えて世界中のこども達が個人的なつながりを築くための「ユニバーサル・プレイグラウンド」を創ることを目指しているパンゲアの活動に共感し、お手伝いをさせていただくことにしました。

 

当時は絵文字とインターネットを使って海外のこどもたちとコミュニケーションする活動、程度の理解しかしていませんでしたが、英語を共通語と位置付けていないことが何より魅力的でした。

 

通訳という仕事をしていると

世界の共通語はブロークンイングリッシュだ!

と強く感じます。

 

パーフェクトな文法、発音で英語を話すお客様は少数派。大半のお客様は(文法的に)理解に苦しむ英語をお話しになります。発音も様々です。

 

でもそんなお客様に共通しているのは、伝えたいことがある、ということです。伝えたいことがあるから英語というツールを駆使したい=英語を話せるようになりたい、という気持ちに繋がります。

NPOパンゲアの活動の様子

▲挨拶カードを使って、日本とカンボジアのこどもが楽しく交流。

 

日本の英語教育は受験をターゲット。
コミュニケーションの英語とは違う現実…

日本の英語教育は受験をターゲットにしていますから、こども達は受験や就職のために英語を勉強します。

 

もちろん語学を体系的に学ぶというのはとても大切ですが、言語学としての英語を学ぶことと、コミュニケーションに必要な英語を身につけるということは、切り離して考えられるべきではないかと思っています。

 

でも、言語が異なる人達がコミュニケーションするためのツールは英語でなくてもいいんじゃないでしょうか?

子ども達がそれぞれの母国語で自然にコミュニケーションをとる姿を目の当たりにして−−

パンゲアの共通語は英語ではありません。ピクトンという絵文字や、げんごろうという多言語翻訳プラットフォームを使って、こども達が自分の母国語でコミュニケーションすることを実現しています。

 

パンゲアが開催した昨年のサマーキャンプ・KISSY(Kyoto International Summer School for Youth)でも、こども達は “あ〜”、“う〜”、と言葉選びに頭を悩ますことなく、それぞれの言語で自然にコミュニケーションが進んでいました

 

困った時にはピクトン。それでもダメなら一緒にパソコンに向かって、げんごろうで顔を見ながらチャット。まさにこれからのコミュニケーションです!

パンゲアが使用している多言語翻訳機「げんごろう」

▲多言語翻訳プラットフォーム「げんごろう」を使ってみんな必死にコミュニケーションとっています

多言語翻訳機「げんごろう」を利用したメッセージカード。

▲日本人とマレーシア人の子ども同士が「げんごろう」を利用して送りあったメッセージカード。

英語が話せなくても世界でコミュニケーションが出来るこれからの時代に大切なこととは−−

先日Skypeでも同時通訳サービスが始まりました。そのクオリティは定かではありませんが、英語が話せなくてもある程度のコミュニケーションができる世界になろうとしている今、私たちに求められているのは、国によって異なる社会性や、ひとりひとりの異なる個性、つまりは多様性を理解し受け入れ、自分を伝え、相手を理解するコミュニケーション能力です。

 

パンゲアの活動はまさにこれからのグローバルな子どもを育ててくれるものだと感じています。

息子がニュージーランドの公立高校を自ら選んだ理由は言語ではなく“学ぶ環境”

15歳の息子はニュージーランドの公立高校に通っていますが、英語に興味があって留学を選んだわけではないんです。どちらかというとドイツ語に興味があるようです。

 

彼が選んだのは、学ぶ環境でした。

一人一人の個性や、意見を持つこと、それを伝えることを大切にしている環境で学びたい−−

と言い出したのは息子自身です。

 

いろいろな国を考えましたが、12年前に抜本的な教育改革を行い自律的学習が定着しつつあるニュージーランドは、息子の考える学びの場なんじゃないかな? と留学先に選びました。

 

日本を離れまもなく1年になりますが、まだまだ英語では苦しんでいるようです。しかし、日本では英語学習にはまったく興味がなかった彼の口から

ちゃんとした英語を勉強して、もっとみんなと話せるようになりたい

と言う言葉が出たことにびっくりしました!

 

授業でもよく発言しているようで、やはり言葉以上に重要なのはわかりあいたいという気持ちだな、と実感しています。

「英語はあくまでもツール」という感覚が息子の中に育まれた
非英語圏への世界各国プチ親子留学経験

私は旅行が大好きで、息子が幼い頃から英語を母国語としない国々を旅しては、現地の幼稚園やナーサリーに息子を預け、現地の料理教室や講座を受けに行ったりと自分の時間を捻出していました。

 

そんな中でジェスチャーや絵、当時流行っていたカードゲームを使って気持ちを伝えるという技を習得し、

英語でなくてもコミュニケーションはできる
英語はあくまでもツールなんだ

という感覚が、息子の中にも育っていたのだと思います。

 

Glolea!を読んでいる読者のママ達はお子さんの英語教育に興味をお持ちだと思いますが、ぜひ、ママたちが言語の違う人たちとのコミュニケーションを楽しむ姿を見せてあげてほしいと思います。こどもたちもきっと一緒に話してみたいなぁって気持ちになると思いますよ。

 

一緒に海外はちょっと大変、でしたら、ぜひパンゲアでグローバル・コミュニケーションの楽しさを感じてみてくださいね。

パンゲアの活動に参加している韓国拠点MIZYセンターの子ども達。

▲パンゲアの活動に参加している韓国拠点MIZYセンターの子ども達。

枝廣綾子のインタビュー後記

岩瀬かずみさんは、社内通訳時代の私の先輩になります。その後、私からお願いをしてパンゲアのニュースレターなどの翻訳を引き受けていただいています。翻訳というのは時間のかかる作業で、お忙しいのに引き受けていただいて本当に感謝しています。
私も通訳を経験した者として、「世界の共通語はブロークンイングリッシュ」というのは非常に重要な気づきであったと記憶しています。アメリカ人やイギリス人のように話したいと思っているうちは、どこか変なコンプレックスが自分の中にあるんですよね。私は帰国子女じゃないとか留学経験も無いとか。今はそんなの関係ないと本当に思えますが、ずいぶん長くコンプレックスを持っていたように思います。
岩瀬さんの息子さんが留学を決められたときには私も驚きましたが、自分で決めて大変だけど外国で頑張っているのは偉い! 逞しいですね。でもその影にはいつも応援してくれるお母様の存在がやはり大きいと感じます。

− 写真提供: 認定特定非営利活動法人パンゲア

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

枝廣綾子(Ayako Edahiro)
Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー

インターネットを利用して、留学しなくても世界の子ども達が出会い、伝えあい、つながることのできる遊び場、「ユニバーサルプレイグラウンド」の研究開発と運営をする認定NPO法人パンゲアの理事をしております、枝廣綾子です。パンゲアには2006年よりボランティアとして関わっており、仕事は、グローバル企業の人事です。

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