「英語なんてできないでいい…」と言っていた娘が自ら「ママ英語教えて!」と言ってくるように ー 大門小百合さんインタビュー
- 枝廣綾子(Ayako Edahiro)
- Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー
皆様こんにちは! 認定NPO法人パンゲア理事/Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー枝廣綾子です。世界の子ども達が言葉、距離、文化の違いの壁を乗り越えて、個人的なつながりを感じることの出来る遊び場「ユニバーサル・プレイグラウンド」を構築しているパンゲアの活動。連載10回目の今回は、ジャパンタイムズ執行役員の大門小百合さんインタビューです。お嬢様が昨年の異文化交流サマースクールに参加されたときの様子と、その後の変化を語っていただきました!
目次
- 国は違っても心は同じだということを娘に気づかせてくれたサマースクール@京都大学「KISSY」を通じて−−大門小百合
- ママが英語ペラペラだと、お嬢さんも英語はペラペラ…とんでもない!
- 英語やダイバシティー教育…無理にやらせては逆効果 インターナショナルサマースクールで世界に友達をつくるところからはじめてみました
- 初日は、例文集を駆使してそれぞれの言語で挨拶や会話をしたようですが−−
- 「これをやりたかった!」を促すプログラム構成に脱帽 子ども向け自動翻訳ソフトで会話もコミュニケーションも加速的に楽しく!
- 異なる国の子ども達とつながりながらチームで作品を完成させるという課題で「共創力」を育む
- 各国から来た仲間との共創体験、お泊り会を通じて本当の意味で「つながる」ということを実感したようです
- 「英語なんてできないでいい…」と言っていた娘が自ら「ママ英語教えて!」と言ってくるように
国は違っても心は同じだということを娘に気づかせてくれたサマースクール@京都大学「KISSY」を通じて−−大門小百合
プロフィール
大門小百合/株式会社ジャパンタイムズ 執行役員編集担当
上智大卒業後、ジャパンタイムズに1991年入社。報道部の政治、経済担当の記者を経て編集デスクとなり、2006年から報道部長、2013年10月1日から執行役員 編集担当となり、「The Japan Times」の編集責任者として就任。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学にてジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に「The Japan Times報道デスク発 グローバル社会を生きる女性のための情報力」(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である、田中宇との共著「ハーバード大学で語られる世界戦略」(光文社)がある。
大門小百合さん(以下、敬称略):
こんにちは、私は英字新聞「The Japan Times」の編集統括をしている大門小百合と申します。
私の娘は、10歳になった2014年夏にNPOパンゲアの企画するKISSYという異文化交流サマーキャンプに参加させていただきました。今回は京都大学で行われたこのサマースクールを通じて、娘がどのように世界へ心を開いていき成長していったのかということについてお話させていただきます。
ママが英語ペラペラだと、お嬢さんも英語はペラペラ…とんでもない!
大門:
実は、私が英字新聞に勤めているというと
お嬢さんも英語ペラペラなんですか?
とよくいわれますが、娘は全く英語ができません。
それどころか、私の会社につれてきた時に外国人のスタッフに話しかけられ緊張したり、色々な人から「英語できるの?」といわれたことで、いつしか娘は
英語なんてできない。
外国なんていかなくていい…。
と言うようになってしまいました。
英語やダイバシティー教育…無理にやらせては逆効果
インターナショナルサマースクールで世界に友達をつくるところからはじめてみました
できれば英語を使えるようになってほしい、外国にも興味をもってもらって、自分の世界を広げてほしいと思っていましたが、無理にやらせてしまっては、逆効果。そこで、しばらく様子を見ることにしました。
そんなとき、友人に誘われたのが、KISSYです。このキャンプは、韓国、ケニア、カンボジア、日本の子ども達が一週間生活をともにして、グループにわかれて、共同制作をして発表するというもの。
娘に
外国の人も来るサマーキャンプがあるよ。行ってみない?
というと、案の定
だって英語できないし…
という答えが返ってきました。
英語使えなくてもいいらしいよ。パソコンや絵文字で言葉の通じないお友達ともお話しができるんだって!
すると、
ホント?じゃあ、行ってみようかな
と興味を惹かれた様子。お友達も参加するということもあり、めでたく参加することになりました。
初日は、例文集を駆使してそれぞれの言語で挨拶や会話をしたようですが−−
このキャンプでは、国の違う子ども達の会話を助けるために「げんごろう」という京都大学で開発されたコンピューターの自動翻訳ソフトを使うことになっていましたが、初日にはそのソフトは渡されず、それぞれの言語で簡単なあいさつや会話の例文が書かれた紙を渡されたようです。
まず、子ども達はそれらを駆使して、コミュニケーションを頑張っていたそうです。
その間、どうしていたの?
と私が聞くと、
Thank youや Sorry や dangerous などの知っている英語を使ってコミュニケーションしたよ。パソコンが来るまでは、あまり相手のことがわからなかったけど、パソコンを使って色々なことを質問したり、答えたりして、相手のことをよく知ることができた
と娘。
「これをやりたかった!」を促すプログラム構成に脱帽
子ども向け自動翻訳ソフトで会話もコミュニケーションも加速的に楽しく!
パンゲアのスタッフの方に聞くと、話せないもどかしさを感じたせいで、2日目にげんごろうを渡すと、
こんな便利なものがあるんだ!
と、まさに水を得た魚のようにパソコンに飛びついて、言葉の通じないお友達と会話や会議を始めたそうです。人間、やはり「これをやりたいという渇望」が大事なんだと思いました。
げんごろうというのは、自分の言語でパソコンに打ち込むと、外国語に翻訳をしてくれるのです。
でも、これは完全なソフトではないそうで、娘いわく
時々訳す言葉がおかしくなるんだよ。そうなったら、外国のお友達はスタッフの人に英語を読んでもらって意味を理解していた。だって「まじで~」って書いてもうまく翻訳してくれないでしょう?
そう、機械は完璧じゃない。ただ、その不便さがあったことはよかったようです。
異なる国の子ども達とつながりながらチームで作品を完成させるという課題で「共創力」を育む
キャンプで子ども達に与えられた課題は「つながる」というテーマでそれぞれ、異なる国から来た子ども達で構成されているチームで何か作品を完成させること。
作品は、まずげんごろうを使いながら、子ども達が何をつくるか決め、工作で作った人形などが、音や光に反応し電気が流れて動くようにパソコンでプログラミングをして、動きのある作品に仕上げることです。
テーマに沿って何を作るか、そして誰がどんな役割をするのかといったことも、子ども達で決めたそうです。
さて、娘のグループはサッカーをテーマにした作品を作りました。
つながるって、どういうときかなあって思ったとき、サッカーでゴールをいれたときにみんな喜ぶでしょう。国とか関係なくプレーしてつながるからみんなでサッカーにしようと決めたんだよ
という娘。人形がボールを蹴りゴールに入ったらまわりの人が「やった!」と大声で喜ぶので、その声に反応して音楽が流れるようなプログラムをパソコンで組んだそうです。
一方、ゴールに入らなかったら、隣の人形がゴールに入れられなかった人形の肩を「大丈夫、ドンマイ!」という意味でたたいて慰めてあげるというプログラムも作っていました。
プログラミングは自分たちでできたの?
という私の質問には
最初全然意味わかんなかったけど、パソコンとかに詳しい人がやってくれた
とのこと。スタッフの方々の助けもあって、無事完成!
キャンプの最後に開かれた作品発表会にお邪魔させていただきましたが、子ども達の作った色々な肌の色のサッカー選手の人形が、シュートを決めたり、失敗したりして、隣の人形に励まされているのを見て、私まで感動で涙がでそうになりました。
大人の私には、ゴールを入れるというところまでは思いつきましたが、ゴールを決められなくても肩をたたいて励ましてあげるなどということをよく考えついたと思います。優しさあふれる作品でした。
各国から来た仲間との共創体験、お泊り会を通じて本当の意味で「つながる」ということを実感したようです
それにしても、翻訳ソフトが完璧であったら、言語なんて学ばなくても機械がやってくれるんだからと、子ども達は外国語を勉強しようと思わなくなってしまったかもしれません。
実は完璧でなかったところが、このプログラムの優れていたところかもしれません。
もちろん、作品を共同で作るという以外にもお泊りの楽しみはたくさんあったようです。何日か一緒に寝泊りしているうちにお友達と仲良くなり、夜に女の子だけで集まって騒いだり、違う部屋の人たちもきて夜の女子会をしたこともよい思い出だそうです。
「英語なんてできないでいい…」と言っていた娘が自ら「ママ英語教えて!」と言ってくるように
娘は、外国のお友達とこのように一緒に生活する機会を得て、外国の文化に少しでも触れたこと、そして、つながるというテーマで国は違っても心は同じという気づきもあり、今は、少しずつ外国に興味をもちはじめたようです。
先日も、
ママ英語教えて
と言ってきてくれました。
これも、こんな素敵なプログラムを作ってくださったパンゲアのおかげです。
枝廣綾子のインタビュー後記
翻訳ツールは完璧でないからいい、確かにそうかもしれません。「まじー」と入力しても上手く行きそうにないと分かれば、じゃあどうしようと考えますよね。お友達と相談したり、スタッフに質問するきっかけにもなっているかもしれません。子ども達の発想は大人には考えつかないというのは本当にそうで、例えばパンゲアの活動で海外とウェブカメラをつないだとき、回線速度が急に遅くなったりすると大人だとただ、イライラするのですが、子どもは、カクカク動いてるーと止まりそうな画面の動きを楽しんだりします。サッカー選手がゴールできなくても慰めてあげる、というのも確かにおっそうくるかと感じますよね。昨年の作品はどれも力作だったことを思い出しました。今回は大門さんより、写真もご提供いただきました。子どもたちはこうしていつも見守って自分を応援してくれる視線の中で育つのだなーと写真を見て感じました。
− 写真提供: 認定特定非営利活動法人パンゲア
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 枝廣綾子(Ayako Edahiro)
- Glolea! 世界と出会い、伝えあい、つながる遊び場アンバサダー
インターネットを利用して、留学しなくても世界の子ども達が出会い、伝えあい、つながることのできる遊び場、「ユニバーサルプレイグラウンド」の研究開発と運営をする認定NPO法人パンゲアの理事をしております、枝廣綾子です。パンゲアには2006年よりボランティアとして関わっており、仕事は、グローバル企業の人事です。