世界を舞台に活躍するオランダ人クリエイターDaan Roosegaarde(ダーン・ローズガールデ)氏に聞く! オランダ人が高い創造性を持つ秘密とは?

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー

オランダに暮らしていると、その「独自性」「創造性」に驚くことが多々あります

オランダ人は、どうしてこんなに独自性・創造性があるんだろう

その秘密が知りたい

と考え、現在さまざまなオランダ人クリエイターにインタビューをお願いしています。


今回は、世界的に有名なダーン・ローズガールデ氏のお話を聞くことができました。

▲「WATERLICHT」というインスタレーションとローズガールデ氏 ©Daan Roosegaarde

プロフィール:ダーン・ローズガルデ(Daan Roosegaarde)

1979年オランダ生まれ。デザイナー兼アーティストであり、オランダと上海を拠点とするソーシャルデザイン・ラボ「Studio Roosegaarde」創設者。都市環境でテクノロジーとアートを融合する、様々なプロジェクトに取り組んでいる。代表的なプロジェクトであるSmog Free Projectでは、スモッグから宝石を作る世界最大の屋外空気清浄機を設置し話題となる。現在は、宇宙ごみに関するプロジェクトもすすめている。

 

今回インタビューに回答してくれたのは、オランダのみならず世界的に注目を集める様々なインスタレーションをプロデュースするダーン・ローズガールデ氏
インスタレーション:展示空間全体を作品とし、鑑賞者の全身が作品に囲まれることで空間を五感で体験しながら作品を味わう現代美術における表現手法・ジャンル。

 

ご自身の創造性の秘密などについてお答えいただきました。

▲ダーン・ローズガールデ氏 ©Daan Roosegaarde

【質問1】
あなたは、どのようにして創造的になりましたか? 

▲「Waterlicht」を見上げる少年 ©Daan Roosegaarde

我々のスタジオでは主に2つの方法でプロジェクトが始まります。


それは私たちが

  1. 何かに腹を立ててイライラした時
  2. 何かに魅了された時

これらの刺激から、インスピレーションが生まれます。

 

例えば、窓の外を見て、

  • 交通渋滞
  • 大気汚染
  • 水位上昇
  • CO2排出量

…等のせいで社会を理解できなくなったら、非常に混乱しますよね。

 

このような時、私達は2つの道を選ぶことができます。

  • 選択肢1:
    文句を言い、部屋に隠れて、他の誰かを責める

  • 選択肢2:
    我々は既にこの状況を作り出してしまった。この状況を抜け出せるように、デザインや設計しようと動き出す

私は自分を活動家のように感じていますが、路上で看板を持って叫ぶ活動家ではなく、アクティベーター(活性化させる人)だと思っています。

 

持続可能な社会の美しさと可能性を示すアクティベーターです。

 

何か私が天啓を得て作品を生み出すのではなく、社会や環境へのフラストレーションが作品を生み出すヒントやきっかけになっているのです。

 

私のアイデア(創造性)は、

なぜ世界がそうなっているのか

という苛立ちから誕生するのです。

 

インスピレーションではなく、フラストレーションが創造の源泉となっているのです。

【質問2】
あなたは学校教育の影響を受けたと感じますか?

実は私は、美術学校から2回追い出された経験があります。


私が今やっているようなことを始めたとき、みんな

クレイジーだよ

と言いましたね。

夢を実現の前に立ちはだかる“恐れ”も味方につけて前進しています

自分の想いを現実する前はいつも怖いですが、それは好奇心からくる行動なので刺激的でもあります。


そして、今「Space Waste Lab」(宇宙ごみに関するプロジェクト)に着手しているので、遅かれ早かれおそらく宇宙へ行くことになるのですが…実は、私は高所恐怖症です。


しかし、自分自身を鼓舞するために、そして、恐れとより良く共存するために、パラグライダーにチャレンジしています。


パラグライダーをする時には下を見ないで、常に前を見て飛び立ちます。


パラグライダーをする時、なにかにチャレンジする時。私は自分の中にある恐れを押しやろうとしていますが、何をしても恐れは心の中に浮かんできてしまいます。

 

なので、私は恐れを取り除こうとはしません。

 

なぜなら、恐れも良いものだからです。恐れと対峙することは自分を知るための良い方法でもあるのです。

 

恐れは私のアイデンティティの一部です。恐れも自身の一部ですから。

 

しかし、私は恐れと上手に付き合うために少し距離を取ることもしています。

【質問3】
あなたの創造性が開花する特別な機会がありましたか?

私は科学教師だった父親のもとで育ちました。物理学の原理はいつも私を魅了してきました。


私は

これはどのように機能し、なぜそうなるの?

代わりにこれをした場合はどうなるの?

と父によく尋ねました。


また、多くの子供たちがそうであるように、夢に向かって真っすぐ進み続けることは創造性を開花させるために重要なことです。


怖がらずに、好奇心を持ち続けてください。

 

そして、他の誰かがあなたの夢を壊したり、変えようとすることを、甘んじて受け入れないでください。驚きをもって世界を観察し、すべてが可能であるという信念を持ってみてください

 

事実や数字によって人々は変化しません。

 

しかし、新しい世界の想像力を引き起こすことができれば、人々に変化を及ぼし活性化することができるのです

 

新しいデザインは人々の創造性を刺激し、“クリーンな世界”を実現するための実用的な解決策を提供する必要があると思います。

 

私達のプロジェクトでは、ゼロから開発した技術を使用する場合もあれば、自然に触発された原則を使用する場合もあります。

日本人クリエーターからも影響を受けています

私は多くのアーティストからもインスピレーションを受けました。例えば、磯崎新は素晴らしい日本の建築家だと思います。

 

彼を調べてみて頂き、あなたの中のインスピレーションを刺激てみてください。

【質問4】
オランダ人の創造性について、お考えがあれば教えてください

オランダは国土の大半が海抜以下で、水に囲まれています。テクノロジーがなければ、文字通り国が水没するのです。

 

オランダ人は常に創造的である必要があります


私達の巡回展「Waterlicht」は、水の詩と力を示しています。
※Waterlicht:オランダに洪水が発生したらどのようになるかを、光で演出したインスタレーション。

▲「Waterlicht」のインスタレーション ©Daan Roosegaarde

「Waterlicht」のインスタレーションは、環境への配慮をなくしイノベーションを止めた場合、水位がどれほど高くなるかを示しています。

 

そして、このインスタレーションを観た人は、自分たちが環境へのケアを怠ると国が水没すると体感し、衝撃を受けるでしょう。

 

私は政治家ではないので、自然エネルギーに200億ユーロの予算をつけることも、長期的な都市プログラムを行うこともできません。

 

けれどうまくいけば、多くの人々に良い影響を与えることができるものを作ることができます。

 

私の仕事は、人々の意識を高めるのです。


カナダの哲学者であるハーバート・マーシャル・マクルーハン(Herbert Marshall McLuhan, 1911年-1980年)は

宇宙船地球上には、乗客はいない。全員が乗務員なのだ

と言いました。


これは、私たち全員が私たちの周りの世界に影響を与えていることを意味します

 

物を一緒に共有、構築、作成することでプラスになる可能性があります。しかし、汚染を共に創り出してしまったり、調和を乱してしまうことはマイナスになります。

インタビューまとめ

美術学校からは2回ドロップアウトしながらも、科学教師であったお父さまの影響を受けたと語ってくれたローズガールデ氏。


創造性のきっかけのひとつが「何かに腹を立ててイライラした時」というのも印象的でした


一見マイナスに見えることが、新しいことをもたらしてくれるのかもしれませんね。


また、ローズガールデ氏は他のインタビューでも

京都の庭園などにもインスパイアされた

と語っています。


彼が影響を受けたという建築士の磯崎新氏も日本人ですし、我々日本人の身の回りには、創造性を刺激するヒントがまだ沢山隠されているのかもしれません

 

日常のささいな出来事などにアンテナを立てて生活をしていきたいものです。

 

いかがでしたか? 今回は「世界を舞台に活躍するオランダ人クリエイターDaan Roosegaarde氏に聞く! オランダ人が高い創造性を持つ秘密とは?」をテーマにインタビュー記事をお届けしました。次回は『「男子校」「女子校」が存在しないオランダ』をテーマにお届けします。お楽しみに!

記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
ハーレム

オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。

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