オランダ語を話せない移民の子供が、たった1年で現地校に通えるようになる秘密
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
目次
親子でオランダ移住!日本人はオランダ現地の小学校に通うことはできるの?
現在8歳の筆者の娘はオランダの現地公立小学校に通っています。しかし、最初から現地の公立小学校に編入できたわけではありません。
オランダ移住当初は6歳で、全くオランダ語が離せない状態でした。
連載第1回目の記事「留年・飛び級当たり前!みんな同じでなくてもいいオランダの小学校」でもお伝えしたとおり、6歳は既に義務教育がスタートしている年齢。
そのため、日本で生まれ育った娘はオランダ語の語学力不足を理由に家の近郊の小学校では受け入れてもらえませんでした。
今回は、オランダ語を話せない移民の子供達が、たった1年で現地校に通えるようになる秘密について、私たちの移住当初の経験から学んだことについてお届けできればと思います。
子連れオランダ移住後、どの小学校に入学できる?3つの選択肢
日本人の子供がオランダで小学校に通うためには、主に以下の3つの選択肢があります。
- 日本人学校(全日制)
- インターナショナルスクール(私立、公立)
- 現地校
そのなかから、我が家は現地校をチョイスしました。
理由はいくつかありますが、一つ挙げるとしたら、「娘にオランダという国に深く根ざしてほしいと思ったから」でしょうか。
オランダ語を話せない生徒はオランダ現地校に通うことができない!?
でも正直言って、我々親の準備は準備は十分でなく、移住後に小学校のあたりをつけました。まず住む家を決め、そこから近所の公立小学校を調べ電話で見学問い合わせ。けれど、当然ながら
オランダ語を話せない生徒の受け入れは難しい
と拒否されてしまいました。
がっかりする我々に、その電話対応してくれた現地校の先生は
非オランダ語話者の子供が通うオランダ語サポート小学校があるよ
と紹介してくれたのです。
学費はほぼ無料!
移民の子供が通う「オランダ語サポート校」の存在とは
欧州各国の例にもれず、オランダにも移民は増え続けています。
移民融合政策を取るオランダは(失敗政策だという世論はありつつも)、オランダ語を話せない移民の子供達にも教育を受ける機会を平等に与えてくれていました。
それは、母国語での授業ではなく、「一般の現地校にスムーズに編入するためのサポート」を行ってくれる小学校の存在。
オランダ語を話せない子女が1年を目安に通う学校(主に小中学校)で、そこでみっちり言葉に慣れ、学校生活に不自由がない語学力に達したと教師たちに判断されたら普通校に転校していくのです。
我が家が紹介してもらったオランダ語サポート学校も公立校なので、学費はほぼ無料。
雑費として月に3ユーロ(350円程度)お支払いしましたが、家が学校から2.5km以上離れているということでスクールバスも無料で利用できました。
本当に有難かったです。
サポート校でもオランダならではの“自由に学ぶカリキュラム”で学ぶことが可能でした
では実際、オランダ語サポート校ではどのようなことを学ぶのでしょうか。
実は、語学専門学校という訳ではなく、オランダ語を話せないなりに生徒たちは算数も体育も美術も行います(カリキュラムは学校独自に構成)。
普通の小学校に、語学サポートが付くといったほうが正確かもしれません。
場合によっては、一般の現地校の中にこういう語学サポートクラスが設けられることもあるようです。娘の通った学校には、移民のみならず、外国で育ったオランダ人の子供が現地校編入のために通っていました。
これは、実際に娘が使っていたテキストたち。子供の生活に必要なボキャブラリーを中心に学べる内容になっています。
先生の話す言葉のみならず、パソコンを使ったオーディオレッスンも重要なオランダ語インプットの場です。
コンピューターはクラスに3台程度しかありませんでしたが、使うタイミングは重ならないので問題なかった様子。
娘が通った学校は、みんなが一斉に同じことをする時間よりも、自分で決めた勉強のカリキュラムを独自に進めていくという時間のほうが長かったように思います。
そのため、自分で決めたスケジュールがひと段落付けば、他の生徒がまだ勉強していても横で休憩時間に入ることもできました。
これは、オランダで盛んなオルタナティブ教育「イエナプラン」のメソッドに近かったです。
全ての現地校で採用されているメソッドではありませんが、そうやってオランダ独自の勉強法にもあえて早めに触れさせているのかもしれません。
更に、教室や校舎内にあるモノには、可能な限り名前のラベリングがされていました。これなら、日常に必要な単語も覚えられそうです。
そんな勉強の甲斐があり、娘は無事にオランダの現地校に編入することができました。
このサポート校に同じ母国語を話すクラスメイトがいるとオランダ語の習得にも若干影響するようですが(母国語での会話に頼るので)、小学校低学年くらいならスムーズに大体1年くらいで転校できるようです。
オランダ語を話せない移民の子供が、1年で普通校に通えるようになる秘密:まとめ
例外はありつつも、オランダで移民の子供が比較的スムーズに現地に溶け込めるのは、こういうサポート校の存在があるからなのです。
しかも学費がほぼ無料だというところにオランダの優しさを感じました。
オランダ語をゼロから学ぶのは娘にとって負担なのではないかと最初は逡巡しましたが、地元の友人と仲良く遊ぶ娘を見ると「あの時に決断してよかった」と思います。
もし仮に無理でもインターナショナル校などの受け皿もありましたので、子供の可能性に賭けることができました。娘にはぜひ、「子供が世界一幸せな国」ならではの学校生活を楽しんでいって欲しいものです。
次回は「オランダ人は外国語が得意!?オランダはなぜEU内“マルチリンガル度”第3位なのか…」その秘密に迫ります。お楽しみに!
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
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オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。