子供が世界一幸せな国オランダの学校が「複数担任制システム」を採用する理由とは?
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
目次
複数担任性もあたりまえ!?
「ワークシェアリング」が浸透しているオランダの学校システム
ワークシェアリング(またはワーキングシェア)という言葉をご存知でしょうか。
仕事を雇用者同士で分け合うことで、各々の労働時間を短くする試みです。
オランダは国を挙げてこのワークシェアリングを積極的に推進してきたので、そのシステムは学校の先生たちの仕事にまで浸透してきています。
ひとつのクラスを、2人以上で受け持つ学校も少なくないのです。
今回の連載記事では、オランダの学校システムから学ぶ「小学校の担任の先生が複数いる状態」の利点についてお話ししたいと思います。
学校ごとにクラスの人数や時間割が違うオランダの小学校
オランダでは、憲法23条で教育の三つの自由
- 設立
- 理念
- 教育方法
が保障されているので、学校ごとに自由に運営方法を決められます。
そのため、国としてのスタンダードがあまりなく、学校ごとにクラスの人数や時間割なども変わってくるのです。
オランダの小学校には担任が2人以上もいるってホント!?
我が家の娘は、オランダに移住してきてから2つの小学校に通いました。
そこで驚いたのが、どちらの小学校にも担任の先生が2人以上いることです。
まず最初の小学校は、2人の先生が曜日ごとに交代で授業を行い、更にアシスタントの先生(こちらも曜日で交代)が常駐していました。クラスの生徒は20人強でしたが、常に大人2人が子供を見守っていたことになります。
これが噂に聞くワークシェアリングか!
と非常に感心したことを覚えています。
そして半年後に転校した2つ目の小学校(現在も在籍中)では、常駐アシスタントはいないものの、やはり週の前半と後半で担任の先生が交代していました。
けれど転入からしばらく経ってから、あることに気がつきました。
曜日でクラス担任が入れ替わる!?
それは、娘の担任の先生が受け持ちではない曜日にも学校に来ていたことです。
簡単に言うと
- 月・火曜日→A先生
- 水・木・金曜日→B先生
が娘のクラスを受け持っていたのに、居ないはずのA先生が週の後半にも学校に来ていることに気がつきました。
これはどういうことかと確認したら、実はこの学校はワークシェアリングで担任を交代している訳ではなく、同じ4年生の1組と2組の担任を曜日で入れ替えていたのです。
担任を固定化しないで曜日で交代させる理由
A先生もB先生も月曜から金曜日までフルタイムで働いているのに、あえて担任を固定化しないで交代させるのは何故でしょうか。
恐らく、子供を見守る大人の目を増やすことで、1人では見落としがちな問題なども気づきやすくする効果を狙っているのだと思います。
更に生徒の成績表はA先生とB先生が話し合いながら付けるので、評価が偏ることがなく、1人の先生の独断と偏見にはならないという利点があります。
これに気がついたときに目からうろこが落ちました。
子供の気持ちをゼロか100の両極端にさせない心理的メリット
そして、その他にも意外な効果が。
実は筆者の娘は、月火を担当しているA先生が少し苦手だった様子。保護者から見るとA先生もB先生も同じくらい優しそうで素敵な先生でしたが、何か本人にもうまく表現できない感覚的なものだったようです。
でもそんな時も、週の後半でB先生に交代するのが分かっているので「学校に行くのが嫌だな」ということにはならないのです。
担任の先生が1人だけだと、相性があまり良くなかった時に生徒も先生も大変ですよね。やはり人間同士、どうしても好き嫌いはありますからね。
そんな時に、このオランダ式の「学校への気持ちをゼロか100の両極端にしない」システムは上手く作用するのではないでしょうか。
注:先生たちがどのような出勤比率で仕事を回しているのかは学校ごとに異なります。
子供が世界一幸せな国オランダの学校が「複数担任制システム」を採用する理由:まとめ
以前お届けした記事「なぜオランダは世界一子供が幸せなの?オランダから学ぶ子供が幸せになるたったひとつの方法」でもお伝えしましたが、オランダはユニセフ(UNICEF)の独自調査により先進国の「子供の幸福度ランキング」(An Overview of Child Well-Being)にて2007年と2013年の2回「世界一子供が幸せな国」に選ばれています。
子供を見守る大人の目が多いオランダの学校システムも、もしかしたら子供の幸福度に反映されているのかもしれません。
また、学校の担任の先生の件だけではなく、心の逃げ場をいくつか子供に作ってあげられたらいいですね。
それは塾なのか、スポーツなのかお稽古なのかはお子さんによって違うでしょうが
あちらはイマイチでも、こっちが楽しいから大丈夫
という拠り所は、誰にでも必要なのではないでしょうか。そしてもちろん、まずは家庭が一番の拠り所になれたらベストだと思います!
次回は「オランダ語を話せない移民の子供が、1年で普通校に通えるようになる秘密」に迫ります。お楽しみに!
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
- ハーレム
オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。