オランダ人が創造的である3つの理由
– オランダ人クリエイターが語る「自分が創造的に成長した訳」-
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
オランダに暮らしていると、その「独自性」「創造性」に驚くことが多々あります。
代表的な例を挙げると、まず「2000年に世界ではじめて同性婚を合法化」したこと。
その他にも、「娯楽大麻への寛容政策」(違法ではありつつも、一定の条件下なら逮捕はされない)や、「安楽死の合法化」などがあります。
国の法律そのものが他国と全く異なるのです。
産業面でも、世界的に使用されているコンピュータ言語「Python」もオランダ人が開発しました。
オランダ人は、どうしてこんなに独自性・創造性があるんだろう? 学校教育に秘密があるのではないか?
と考え、オランダ人クリエイターにインタビューを敢行しました。
そこには、オランダ人自身が分析する斬新な「オランダ人の創造性の秘密」がありました。
目次
持続可能な製品をデザインするクリスティアーン・マーツ氏
プロフィール:クリスティアーン・マーツ(Christiaan Maats)
持続可能なブランドとコンセプト開発の工業デザインエンジニア。 2010年に、使用後に土に戻すと花が咲く世界初の生分解性シューズを開発し、「OATシューズ」を設立。2015年以降は、持続可能な製品とブランド開発について企業に助言することに注力。 持続可能なライフスタイル・ケアブランド「DFNS」グローバルサステナビリティディレクターであり、共創によるNoorderwindイノベーションのパートナーを務める。
今回インタビューに回答してくれたのは、様々な「持続可能なプロダクト」をプロデュースするクリスティアーン・マーツ氏。
ご自身の創造性の秘密と学校教育から受けた影響などについて語ってくれました。
【質問1】
あなたは、どのようにしてクリエイティブな人になれたのですか?
正直に言うと、創造的であることは自然なことだと思います。
やり方が異なるだけで、誰もがみんなクリエイティブですよ。
ただし、創造的であるためには、成功の前にさまざまな物を試し、無数の回数失敗することが欠かせません。
失敗は創造性の基本です。
失敗することが許されないなら、私たちは創造的には決してなれないでしょうね。
【質問2】
あなたは学校教育の影響を受けたと感じますか?
私はまあまあ優秀な学生で、学生時代は語学と歴史で良い成績を修めました。
数学は苦手で、化学は大嫌いでした。
それでも、私は高校で理系コースを選択しました。なぜなら、
そうすれば後のキャリアのための最高のチャンスを持てる
と言われたからです。
私が選択肢に挙げたのは、家業であった薬学、または工業デザインのどちらか。
物事を描くことやデザインすることが好きだったので、私は、(大学に行かないことは考えずに)直感で工業デザインを選択し、デルフト工科大学※に進学しました。
※デルフト工科大学:オランダの理系名門大学
でも、そこで、もっと数学と物理学が嫌いになりました!
オーストラリアのシドニーでプロダクトデザインを通じて「ストーリーテリング」の研究をするようになったときに、はじめて物づくりへの情熱を感じました。
こうやって振り返ると、私は(成績優秀だったのにもかかわらず)学校教育の形式に適合しませんでした。
そういう意味では、反面教師的に影響を受けているかもしれません。
【質問3】
あなたの創造性が開花する特別な機会がありましたか?
これに関しては、両親に感謝しています。
彼らは私を急かしたり、大学を急いで卒業してキャリアをスタートさせるように仕向けることは決してしませんでした。
その代わり、冒険する私を信頼してくれたのです。
さまざまな文化や国、社会環境を探索しました。
そして、両親と祖母は、私のデザインとビジョンを実現するのを手伝って、デザイナーとしての私の発展を支えました。
彼らは私に人生で最も価値のある通貨である「時間」を与えてくれました。
探求し、間違いを犯し、学び、成長するための時間を。
【質問4】
オランダ人の創造性について、お考えがあれば教えてください
私が考える、オランダ人の創造性の秘密は3つあります。
オランダ人が創造的である理由その1:
中世からの移民の多さ
まず一つ目は、中世から移民が多く、外部からの影響を受け入れてきたこと。
外国人のような「規範から外れた人々」を気にしないことから利益を得たのです。
オランダが、出島経由で日本との取引を許可された唯一の理由は、日本をキリスト教に改宗させることに興味がなかったからですよね。当時のオランダ人は、日本とただ貿易がしたかっただけです。
オランダ人が創造的である理由その2:
最善の解決策を見つけるために率直な議論をする
2番目は、オランダ人は率直であることです。
目上の人々とでも率直に議論し、最善の解決策を見つけるために協力したいと考えています。
そして、それは創造的なソリューションを刺激します。
他の文化の人々には、それが失礼に見えることもあるようです。でも多くのオランダ人にとっては、より良い解決策を見つけるためにそうしているのです。
オランダ人が創造的である理由その3:
国が水没しない方法と解決策を地域社会全体で見出す必要性があったこと
3番目は、オランダが海抜以下の土地が多い低地国であること。
水没しないようにする方法を設計するか、水を汲み出して干拓地を作ることによって乾燥した土地を作る必要がありました。
農民と地域社会は、解決策を見つけて水システムを組織化することに協力しました。そうでなければ、今でもオランダは水浸しだったでしょうね。
インタビューまとめ
成績優秀でありながら、学校教育には適応しにくかったと語ってくれたマーツ氏。
それでも、ご家族が辛抱強く待ち、応援してくれたことによって才能を開花させることができたのですね。
(家族は)探求し、間違いを犯し、学び、成長するための時間を与えてくれた
というマーツ氏の言葉を、私たち親はしっかり受け止めていきたいです。
いかがでしたか? 今回は「オランダ人クリエイターが語る自分が創造的に成長した訳」をテーマにインタビュー記事をお届けしました。次回は「算数は万国共通じゃない? 世界でやり方いろいろ」をテーマにお届けします。お楽しみに!
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
- ハーレム
オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。