幼児から「性教育」をはじめるオランダ
どのように学校教育で性教育をはじめる?伝える?

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー

お子さまが男の子でも女の子でも、避けて通れないのが性教育。

 

今回は「オランダの性教育」に関してお話しさせてください。

性の多様性が義務教育に

性の多様性&性の権利

▲「子ども自身の性の権利」や「性の多様性」をオランダでは学校教育でどう教える? 何歳から性教育がはじまるの?

オランダは「教育の自由」が保障されていて、カリキュラムに関しては学校の裁量が大きい国です。

 

しかし、1993年にオランダ政府は「中核目標(kerndoelen)」という

生徒が卒業までに身に着けるべき内容

を教科ごとに設定しました。

 

数年ごとに改定も加えられていて、2012年にはセクシュアリティに関して

初等教育期間中に、社会における性的多様性を尊重することを学ぶ

と追記されました。

早ければ4歳から始まるオランダの性教育

オランダの学校教育では4〜5歳の年齢から性教育がはじまります。

▲オランダの学校教育では4〜5歳の年齢から性教育がはじまります。

オランダの小学校は、まだ本格的に勉強をしない幼児クラス(4~5歳程度の子供が在籍。義務教育は5歳から)から始まります。

 

学校によっては、その4歳から初期の性教育を開始するところもあるというのです。

 

とはいっても、いきなり生殖などの踏み込んだ内容ではなく、その前提となる

  • 愛情の大切さ
  • 自分の意思の伝え方
  • 他人の気持ちの尊重

といった「他者とのかかわり」から学び始めることが多いようです。

 

以下の動画は、オランダの小学校が幼児(4〜5歳)にどのような「性教育」をするのか記録した様子です。

Spring Fever – The teaching package Relationships & Sexuality

この動画の4分20秒あたりから

良く知らない親戚の女性が訪ねてきて、あなたに(あいさつの)キスをしたいと言っています。そんな時どうしますか?

というロールプレイングが始まります。

 

教師が男児とロールプレイをするのですが、これがなんとも秀逸で、男児はしっかりと

キスはいやだ

 

でも握手ならいいよ

自分の望まない形での肉体的接触を拒否するのです。

 

そういったやり取りを通じ、子供たちは肉体的接触について

  • 自分の意思を述べて良い
  • 自分の意思を通す権利がある

ということを学ぶのですね。

オランダの公教育における性教育

そして徐々に10歳ごろに生殖や妊娠出産の仕組み、中等教育に入学後の12歳から14歳ころまでには、避妊に関してや性感染症のリスクといったような多岐にわたる内容を学ぶことが多いようです。

春の性教育ウィーク

しかし、このような性教育を通年で行っているわけではなく、ほとんどの学校は毎年3月の春分頃に集中して行っています

 

性教育研究や性的マイノリティの権利擁護を専門とする団体「Rutgers」の提唱で 実施されはじめた「レンテクリーベルス(Lentekriebels/春のくすぐったさ)」という性教育ウィークがあり、オランダ各地の小学校が参加しているのです。

オランダの性教育

▲筆者の子供が通う小学校が実施した保護者向け「レンテクリーベルス」説明会

「レンテクリーベルス」運営委員会が設定した2021年のテーマは

性の多様性およびジェンダーの多様性

で、前述の「中核目標」の基本に立ち返るような内容でした。

Hinke en Jette zijn geboren met hulp van een donorvader


毎年その「レンテクリーベルス」の頃に、オランダの公共放送NOSの子供ニュース「NOS Jeugdjournaal」でも性教育に関するトピックを取り上げているのですが、それがいつも秀逸です。

 

今年は、

同性愛者の2人の母親の間に、精子バンクによって誕生した12歳と10歳の姉妹

を取り上げていました。

 

この姉妹がともに自分の出自に関して知っていること(ただし精子提供者を知る権利があるのは16歳以降)、顔だし名前だしで全国ネットのニュースに出演していることも、日本人感覚だと驚きのことではないでしょうか。

 

けれどこういう報道に幼いころから触れているオランダの子供たちは、「性」および「性の多様性」を普通のことと捉えて成長する機会を持つのです。


それが延いては、生き方の多様性の受容につながるのではないかと筆者は考えます。

親も一緒に考えたい「性の権利」や「性の多様性」

身体の構造や生殖について教えることも大事ですが、

  • 子供自身の性に関する権利
  • 性の多様性

に関して教えていくことも必要なのではないでしょうか。

 

そして子供と一緒に、我々保護者も今一度そういうことについて考える機会をもっていたいですね。

 

この記事が、皆さまの一助になれば幸いです。

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記事をお読み頂きありがとうございました!

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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
ハーレム

オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。

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