“子供の学力”に影響を与える要因とは?オランダの最新研究から見えてきた保護者の●●との相関関係

倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー

子供の学力に影響を及ぼすものとは?

「Glolea!」読者のみなさまにとって、お子さまの教育は一番の関心ごとではないでしょうか。

 

そんな中、2020年末にオランダで「心中複雑になる」研究が発表されました。今回は、その一部をお話しさせてください。

オランダにおける長期研究で明らかになった「子供の学力」に大きな影響を及ぼすものとは?

その研究を紹介しているのが、オランダメディアのこちらの記事。

子供の学力・成績に影響を与える要因とは?

Achterstand kind met laagopgeleide ouders veelal blijvend: ‘Heel alarmerend’ /低学歴の親を持つ子供は永久的に遅れを取ることが多い:非常に憂慮すべきことである

 

出典:NOS

私が読んで、特に印象深かった部分を以下に抜粋します。

中央計画局(CPB)は、オランダ統計局の人口統計データとともに、初等中等教育の長期研究から得られた数千人の小学生のデータを比較しました。

 

これは、低所得または低教育レベルの親の子供は、高所得または低教育レベルの親の子供よりも、3歳での算数および言語スキルがはるかに劣っていることを示しています。


「グループ3※1から、差はそれ以上増加しないか、ほとんど増加しませんが、それ以上小さくなることはありません」と研究者は書いています。

 

※1:6歳くらいの子供が属するオランダにおける学年。グループ1と2が幼稚園のような存在なのに対し、グループ3から本格的に勉強が始まります。

移民の背景※2を持つ子供たちは一般的に言語と算数が他のクラスメイトより遅れた状態で始まりますが、彼らは小学校の間に追いついてきています。

 

最終的に、彼らは、移民の背景がなくても、同等の社会経済的背景を持つクラスメイトとほとんど違いがなくなります。

 

※2:親が移民や難民としてオランダに移住してきた子供。本人はオランダで誕生していることもあります。

子供の学力に影響を与えるのは親の収入と学力

先ほどの抜粋の最後の言葉

最終的に、彼らは、移民の背景がなくても、同等の社会経済的背景を持つクラスメイトとほとんど違いがなくなります

は要するに、例え移民の背景があったとしても、最終的に学力に影響を与えるのは親の収入・経済力と学歴だということです。

 

そうだろうなと思いつつ、何ともやるせない研究結果だなと思います…。

親に経済力があると子供の学力が高くなる理由として考えられることとは?

理由1:居住環境?

なぜ親に経済力があると子供の学力が高くなるのかというと、ざっくり言えば良いエリアに住めるからだと思います。

 

家賃や家の売値が高い地域にある小学校は、得てして小学校の評価も高いです。

 

オランダにはいくつか小学校と中等教育を多面的に評価するサイトが存在しますが、「家賃の高いエリア」は全体的に評価も高く、大学準備コース校(オランダは中学校から、大学進学を見据えたコースや職業準備校など3つの進路に分かれる)への進学率も高いのです。

理由2:教育を意識した親の行動?

また、親の学歴が早いうちから子供に影響を与えるのは、無意識のうちに教育を意識して子供に接するからではないでしょうか。

 

おもちゃを選ぶ時に知育玩具を選んだり、本の読み聞かせをたくさんしたり。(これは私の個人的な見解で、記事はその辺には触れていません)

教育格差は、どうすれば埋まる? 低年齢からのサポートが鍵か…

教育格差を埋めるには低年齢・幼少期からのサポートが必要不可欠

前出の記事では、

格差を解消するため、なるべく早いうち(年齢が幼いうち)に不利な家庭環境の子どもをサポートする体制を強化したほうが良い。

という専門家のコメントも掲載されていました。

のびのびしたフィンランドの教育

経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)の上位に入る国としても知られているフィンランド

▲経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)の上位に入る国としても知られているフィンランドの就学前教育はどうなっている?

ただ、世界的に評価の高いフィンランドの教育では就学前は勉強させず自然に触れ合ったりすることが推奨されていますよね。

上記の記事でも、フィンランドの幼児教育がかなりのびのびしたものだと伺えます。

 

言葉を習得していない移民の子供に対しては特別なメソッドがあるようですが、これもかなりゆったりしたイメージが読み取れます。

 

全く別の考え方ですが、こちらは上手くいっているようです。

▲映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」でもとりあげられ話題となった、のびのびしたフィンランドの教育を語る文部大臣・学生・学校長のインタビューシーン。

進路分けの最適年齢とは?

進路設定の最適年齢とは?

▲子供の進路設定の最適年齢はある?

また先ほどのオランダの記事は

中等教育からコース(進路)が分かれるオランダの教育システムにも格差を固定する問題がある

とも触れていました。

 

12歳で一度進路を固定されてしまうと、ルール的には可能でも、そこから(特に学力が上のレベルに)進路を変更するのは非常に困難なのです。


そのため、

コース(進路)分けをもう数年遅らせ、15歳から16歳くらいで選択できるようにしたほうが良いのでは

という提案でした。

 

これはまさに、日本の高校受験くらいの頃合いですね。この考え方でいくと、日本の高校受験のタイミングは理にかなっているのかもしれません

教育の正解はひとつではない

子供によって適性もありますし、教育の正解はひとつではないと思います。でも正解が無いからこそ親は悩み、つねに揺れ動くのですよね。

 

この記事が、皆さまの一助になれば幸いです。

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倉田直子(Naoko Kurata)
Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
ハーレム

オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。

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