帰国生の大学受験&入試事情
長期留学・駐在などで外国の教育を受けた帰国子女は、日本の大学を受験できるの?
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
日本の2月は、中学受験のシーズンでしたね。
私が住むオランダでも、1月から3月は小学校の最上級生が中等教育に進むにあたり、様々な中学校が学校見学会を設定しています。
そして中等教育に進むと、がぜん気になるのがその先の大学進学のお話。
先日、同じ在オランダ邦人の友人と
外国の教育を受けた子供は、日本の大学受験資格はあるのか?
という話をしたので、その際に得た知見をシェアしたいと思います。
目次
文部科学省の解説は?
12年間の正規学校教育過程かどうかが分かれ道!?
まず結論から書いてしまうと、「外国の教育を受けた子供も日本の大学受験資格はある」ようです。
日本の文部科学省のホームページに「入学資格に関するQ&A(平成31年1月31日現在)」という項目を見つけました。
それによると、外国の教育を履修した生徒が日本の大学受験資格があるかどうかは
正規の学校教育の12年目の課程を修了しているか否か
で判断されるそうです(同ページQ3参照)。
これは、「学校教育法施行規則第150条第1号」に基づくという注意書きもありました。
- 飛び級などをすることにより12年間教育を受けておらず18歳未満の場合
- 日本でも教育を受けたため外国だけでは12年間教育を受けていない場合
- 学校教育課程が13年ある国で、12年の課程を修了した場合であっても、最終的に修了した課程が正規の学校教育の12年目以上の課程である
上記のような場合も、大学入学資格は認められることになります。
ただし、国によってはそれがあいまいな場合もあります。今回は、私が住むオランダを例にとって説明しますね。
ちょっと複雑な「オランダの教育システム」なら“12年の壁”はどう解釈される?
実は、オランダは小学校を卒業した後の中等教育が、進むコースによって異なります。
そしてカリキュラムそのものが異なるので、それぞれの修了証書(ディプロマ)を取得するまでに必要な年数も異なります。
コースと必要年数は以下のようになります(ただし飛び級での短縮も可能)。
- 職業的中等教育(VMBO)/4年
- 高等一般教育(HAVO)/5年
- 大学準備中等教育(VWO)/6年
それぞれのコースから別コースへの編入も可能です。
英語の解説ですが、この複雑なオランダの中等教育システムを整理して説明してくれている動画がありますので、こちらもご参照ください。
これの何が問題になるかというと、私が懸念しているのはオランダの小学校(初等教育)の年数です。
小学校の前半2年間を「幼児教育」と定義するかどうかで日本の大学受験資格のありなしが変わる?
初等教育3年目から「学習」がはじまるのオランダの場合
オランダの小学校は8年制なのですが、最初の2年は特に勉強を行わない「幼児教育」にあたるのです。いうなれば、幼稚園のような存在。
「学習」が始まるのは3年生からです。
それらをすべてひっくるめて「8年」と認めてくれるなら、オランダの職業的中等教育(VMBO/4年)コースに進学しても、日本の大学受験資格(12年課程)を満たすことになります。
けれど幼児教育を除いた6年のみを勘定するなら、大学準備中等教育(VWO/6年)コースに進学しないと日本の大学受験資格はないことになります。
前述の日本の文部科学省のページによると、
修了した課程が正規の学校教育であるか、何年目の課程であるかは、それぞれの国の大使館等にお問い合わせ下さい
とのことでした。
実はその点は特にまだ深堀していないので、気になる場合はみなさまご自身で該当の施設(在住国の大使館など)にお問い合わせいただければと思います。
11年以下でも日本の大学進学をあきらめない! 救済策とは?
そして仮に在住国の教育カリキュラムが日本の大学受験資格(12年課程)を満たしていなくても、救済策はあるようです。
文部科学省のページに、以下のような記述がありました。
外国において、高等学校に対応する学校の課程を修了したにもかかわらず、学校教育における11年の課程しか修了したことにならない場合であっても、その課程が文部科学大臣から指定を受けた11年以上等の要件を満たす学校の課程(文部科学大臣指定 高等学校に対応する外国の学校の課程一覧)であれば、大学入学資格が認められます。
また、それ以外にも、指定された準備教育課程(文部科学大臣指定準備教育課程一覧)を修了した場合、高等学校卒業程度認定試験に合格した場合、各大学が行う個別の入学資格審査によって高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められた場合にも、大学入学資格が認められることとなります。
さらに、外国の大学入学資格である国際バカロレア、アビトゥア、(フランス)バカロレア、GCE Aレベルを取得していれば、大学入学資格が認められます。
ちなみにこの解説にある「各大学が行う個別の入学資格審査」とは、同ページ内の他の項目(Q2)によると、
個々人の学修歴などから、高等学校や大学を卒業した者と同等以上の学力があるか否かを判断する審査
なのだそう。
どのような審査を行うのかは各大学ごとに決めているので、どのような準備が必要なのかは各大学に問い合わせる必要があります。
そして注意が必要なのは、それはあくまでも入学資格の有無にかかわる審査であり、入学許可とは全く異なるそうです。
この審査に合格した後に更に入学試験を受ける必要があるのだとか。混同しないようにしたいですね。
けれど、12年の課程を修了していない生徒にも道が残されているのは朗報なのではないでしょうか。
まとめ:さまざまな進学ルートは留学中の生徒にとって安心につながる
長期の親子留学、母子留学、単身留学中、駐在帯同中の生徒にとっての日本の大学進学の可能性と選択肢
これからは、日本以外の場所で小学校や中学高校に通うお子さまも増えてくるのではないでしょうか。
その子たちが
大学は日本で通いたい
と希望した時に進学ルートがあるのは、海外で子育てする(または外国にお子さんを送り出した)保護者の皆さまにとっても安心材料だと思います。
教育もグローバル化が進む世の中なので、様々なルートを確保していきたいですね。
※この記事で参照しているのは、文部科学省が2019年1月31日現在に提示している内容です。最新情報は、ご自身でご確認ください。
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オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。