国民の9割がバイリンガルって本当!?オランダ人の英語力が高い理由とは?
- 倉田直子(Naoko Kurata)
- Glolea! 多様性&マルチリンガル子育てアンバサダー
目次
オランダ人は外国語が得意!
EU内「マルチリンガル度」第3位のなぜ?
先日、興味深いデータを見つけました。駐日欧州連合(EU) 代表部が発行する日本語のウェブマガジン「EU MAG」によると、EUの中でオランダ人の「マルチリンガル度」は第3位なのだとか。
- 参照記事:EUでは何語が話されているのですか?
こちらのページ中ほどの表によると、オランダ人で「1か国語(母国語)しか話せない」割合は6%にとどまり、国民の94%がバイリンガル、またはマルチリンガルだというのです。
ちなみに
- 「母語+2言語以上」話す割合:77%
- 「母語+3言語以上」話す割合:37%
にものぼるというのです。※ただし上記調査対象の年齢層は不明。
このオランダ人の語学力の高さには、まだオランダ語会話がおぼつかない筆者も日々助けられています。
英語を母国語としない国の中では、世界で1番英語力が高いというデータ(2016年度)もあり、病院の医師や公立小学校の先生、果ては街のスーパーのレジスタッフまで流暢な英語を話してくれるので、本当に感心します。
オランダ人のお年寄りの英語力は…
けれど筆者は、とあることに気がつきました。
それは、ある一定の年代から上の世代の方は、オランダ人でもあまり英語力が高くないということです。
8歳の娘の学校の同級生のお迎えに来ている、おじいちゃんおばあちゃんと話す機会もあるのですが、お年寄りの方とは(筆者の拙い)オランダ語のみで会話することになります。
もしかしたらこちらが英語で話しても理解はしてくれるかもしれませんが、返答はすべてオランダ語です。
10代後半から筆者より少し上の世代である50代、60代の方は本当に流ちょうな英語を話されますが、やはりそこから上は、オランダ語のみしか話さない方が多くなるようです。
オランダ人の英語力の高さはテレビにあり!?
そのことを、オランダ語・英語・独語・日本語・仏語の5か国語話者であるオランダ人の友人に話したところ
やはりテレビの影響が大きいのではないか−−
と彼女の考えを教えてくれました。
彼女曰く
- 現在のお年寄りの世代でも学校で英語は勉強していた
- けれどそれより下の世代(50代以下?)は子供のころからテレビを見ていて、幼い頃から英語に触れていた
- 17歳の彼女の息子に至っては、早くからYouTubeで英語圏のYouTuberたちの動画を見たりしていたので、特別な英語教育を受けていなくても英語ペラペラ
なのだとか。
テレビ世代&ネット世代のオランダ人にとって英語は身近な言語
オランダ人といえども、テレビや英語のコンテンツが普及する前の世代は、ただ「勉強」としてしか英語に触れない人が多かったようです。
それがテレビ世代を経て、幼い頃からネット動画で英語コンテンツに触れてきた世代にとって、英語はごく身近な言語のようです。
ちなみに、何年生から英語教育を始めるかというカリキュラムは学校ごとに違うのですが、近年ではどんどん低学年化が進んできているようです。
筆者の娘が通っている小学校でも、ゲームのような内容とはいえども主に8歳の子が在籍する学年から英語を始めています。
言語的にも地理的にも外国に近いオランダ
そして更に、インド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派に属するオランダ語という言語にも、多言語を促進する秘密があるようです。
下のリンク先に欧州言語の「似ている・似ていない」の関係を表した図があるのですが、これを見るとやはりオランダ(中央付近にある青いDUTという丸)は、英語やドイツ語などと非常に近い言語なのだということが分かります。
単語や文法の類似性から、オランダ人にとって英語やドイツ語の習得は、それほど難しいことではないようです。非常に羨ましいですね。
そして言語の近さばかりではなく、オランダは東をドイツ、南をフランス語が公用語であるベルギーと国境を接しています。
フランス本国も高速電車で3時間半程度ですし、海を挟んでイギリスとも隣国同士にあたります。そういう地理的な近さも「外国語を覚える」という心のバリアーを低くしているのかもしれません。
九州程度の国土しか持たない小国オランダにとっての英語・ドイツ語の重要性
更に言うと、大航海時代は貿易大国だったオランダですが、現在は日本の九州程度の国土しか持たない小国です。
そういうオランダにとっては、近隣国とのお付き合いは生き延びるためにも非常に重要なことなのです。
良い仕事が見つかれば外国で働くこともいといませんし、逆に優秀な人材を外国から招へいするために企業の公用語が英語だったりすることも珍しくありません。
ちなみに、オランダの輸出品の24.5%を購入しているのがドイツなのだとか。
このデータだけでも、オランダにおけるドイツ語の重要性が分かりますね。
まとめ:オランダ人にとって、多言語を話すことはサバイバル能力のひとつ!
現代のオランダ人にとって、多言語を話すことはサバイバル能力のひとつでもあるようです。その危機感に、言語的・物理的な外国との近さが拍車をかけているのですね。
日本語は欧州言語とは全く異なるのでハンディを感じますが、オランダの若者のようにインターネット経由で英語のコンテンツに触れることはできそうです。
やはり文明の利器は、使いこなさないともったいないですね。
次回は「子どもの選択を尊重するオランダの親の子育て」に迫ります。お楽しみに!
記事をお読み頂きありがとうございました!
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オランダ在住ライター。2004年にライターデビュー。2008年に家族の仕事都合で北アフリカのリビアに移住。リビア在住中に、現地の生活をリポートする海外在住ライターとして活動開始。2011年8月、英国スコットランドに移住。2015年夏よりオランダ在住。2008年生まれの娘は日英蘭語のトリリンガル。