最前線!英語・中国語バイリンガルを育てるカナダの公立校の取り組み
- 中島範昭(Noriaki Nakajima)
- Glolea! カナダ・グローバル教育アンバサダー
目次
すべての人が平等に社会参加できる国づくりを進めているカナダ
1971年に世界で初めて「多文化主義政策(multiculturalism)」を導入したカナダ。私の住んでいる町でもいろいろな人種、文化の人々が住んでいます。お互いの文化・多様性を尊重し、すべての人が平等に社会参加できるような国づくりを目指しています。
真のグローバル人材を育むカナダの公立校の取り組み
多民族・多文化の中で多言語を学ぶ英語・中国語バイリンガルスクール
「チャイニーズバイリンガルクラス」という非常にユニークなクラスのある私の息子が通っている小学校は、まさに「小さな多文化主義国」です。
多民族の中で育っていき、多言語を学んでいく。まさに「グローバル人材」を育てている現場です。これからの子どもたちに成功をもたらすであろうキーワード「グローバル教育」のヒントを見つけることができるかもしれません。
英語圏のカナダで中国語イマージョン教育の理由
私の息子が通っているカナダの公立小学校には、英語で授業をする「普通クラス」の他に「チャイニーズバイリンガルクラス」というのがあります。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、カナダでは英語とフランス語が公用語となっています。フランス系のカナダ人も多いのですが、政府関係のお仕事ではフランス語ができた方が有利なようですし、ある程度の規模の企業でもフランス語はできたほうがよさそうです。ですので、昔から「フレンチ=イマージョン※」というクラスは結構ポピュラーでした。
※イマージョン=「浸す」という意味。特定の言語環境に浸し、様々な分野の学びをその言語で学びながら言語の習得を促す方法として日本でも注目を集めている。
しかし、カナダだけではありませんが、私の住んでいる町には中国からの移民者がとても多く
学校で中国語を使用して勉強を教えてほしい
というリクエストがあったそうです。日本では考えにくいかと思いますが、何とそれが通って「チャイニーズバイリンガルコース」が始まったそうなのです。
午前中は中国語・午後は英語で学ぶユニークなシステム
「チャイニーズバイリンガルコース」ではどのように授業展開をしているのかというと、
- 午前中:中国人の先生が中国語で算数や中国語といった教科を教える
- 午後:カナディアンの先生が英語や理科などを教える
という形式です。
私の息子は、このコースにキンダー(5歳)から入っていて、現在はペラペラとまではいかないものの中国語(マンダリン)も何となく聞いたり話したりできるようになりました。
両親とも日本人の我が家では当然、宿題などの手助けもできません。「漢字」と言う共通の文字があるのが唯一の救いですが、それも若干形が違うので親にとっても非常にハードルが高いのです。
私の妻は、他の白人のお母さんたちと一緒に同級生のママ友が始めてくれた「お母さんのための中国語講座」に参加し始め、最近はちょっとしゃべれるようになったそうです(笑)
中国語で学ぶ午前中は中国語のクラスへ
英語で学ぶ午後は英語のクラスへ移動
少し前に授業参観のようなものがありました。「Student led conference」というもので、子どもたちが教室や備品、日頃の活動などを紹介してくれるのです。私も初めて実際の教室内を見させてもらいましたが非常に面白かったです。
この「チャイニーズバイリンガルクラス」は、基本的に生徒たちを二クラスに分けています。そして、二つの教室を使用して午前と午後で「中国語の部屋」と「英語の部屋」に分かれて学習します。
部屋の備品には、小さなネームカードが張り付けてあります。ちゃんと中国語の部屋のカードは中国語で。英語の部屋は英語で書いてあります。先生も、基本的に中国語で教えます。時々どうしてもわからない時は英語での説明をいれているようでした。
最後に、中国式の習字の時間がありました。一つのテーブルで様々な人種の子どもたちが、中国のスタイルで習字をしている姿は非常に興味深いものでした。
少しずつではありますが、息子はこの様にして、英語と中国語を学校で学んできてくれます。
自分が英語の学習に苦労したこと。そして実際にその英語をコミュニケーションの中で使用するには非常に物足りなかったことを思い出すと、このカリキュラムはすばらしいことに感じます。
まとめ
複数の言語を無理なく学ぶことができる、この「チャイニーズバイリンガル」というカリキュラムは、もちろん言語習得ということでもすばらしいものです。
また、さらに私が「いいな!」と思うことは、さまざまなバックグラウンドを持 つ子どもたちが、ひとつの教室で母国語ではない言語の中で学んでいくということ。
これからの日本社会も様々な現場でこのような多人種、多文化が起こりうる可能性があります。大事なビジネス交渉や、大学などの研究現場だとなおさらです。無邪気に毎日を過ごしている子どもたちを見ていると、様々な分野で未来を担う姿が目に浮かんできます。
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 中島範昭(Noriaki Nakajima)
- Glolea! カナダ・グローバル教育アンバサダー
- バンクーバー
1児の父。バンクーバー日本語文化学院、CJLA コキットラム日本語アカデミーを経営。また、ローカルの生徒向けの学習塾(BrainChild)、北米初の日系総合芸能スクールGEVなども経営。2007~2011年には、JALTA(カナダ ブリテッシュコロンビア州 日本語教育振興会会長)を務める。