子ども自身が「子どもの貧困問題」を支援するスウェーデンの 「メイフラワー/Majblomman」チャリティーとは?
約6千600万円分のメイフラワーを売り上げた12歳の少年も話題に!
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
こんにちは! スウェーデン女王認定 認知症専門看護師/Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー長谷川佑子です。
国や地域によって
- 子ども達の生活
- 置かれている状況
は全く異なるものです。
さらに、同じ国であっても、生まれてきた家庭によっても、違うこともたくさんあります。
スウェーデンでは、
どのような家庭に生まれたとしても、子どもが平等に育ち、みんなにチャンスのある社会である
という前提のもと
国、地域が子どもを育てる
といった価値観があり、そのための社会保障もあります。
しかし、現実には貧しい家庭で育ち、困難を抱える子ども達も存在します。
社会のそのような問題は、大人だけが考え解決のために動くべきでしょうか。
子どもの貧困について、スウェーデンの子ども達はどのように学び、行動しているのかをお伝えします。
目次
- 貧困状況の子どもを “子ども達が” 支援する 「メイフラワー/Majblomman」チャリティー
- 日本での赤い羽根募金の「赤い羽」のような意味合いを持っているスウェーデンの「メイフラワー/Majblomman」
- 「メイフラワー/Majblomman」は子どもが大人に販売して支援活動を行っている
- 「メイフラワー/Majblomman」チャリティーの参加モチベーションが高い理由
- 12歳の少年が約6千600万円分のメイフラワーを売り上げ話題に!
- 子ども達は保育園時代から異文化の子どもを学ぶ
- 社会科の課題にいつもワタシが苦戦(汗)
- 小学生でも「自分のあたまで考え意見述べること」が当たり前に課題として出されるスウェーデンの教育
- まとめ:子ども達も社会の一員だからこそ自ら社会を学び・考え・行動し「社会参加」することが大切
- チャリティー活動関連リンク
貧困状況の子どもを “子ども達が” 支援する
「メイフラワー/Majblomman」チャリティー
五月の花:Majblomman – På barnens sida sedan 1907
On the children’s side since 1907
▲「メイフラワー/Majblomman」チャリティーについての解説動画(スウェーデン語)
日本での赤い羽根募金の「赤い羽」のような意味合いを持っているスウェーデンの「メイフラワー/Majblomman」
スウェーデンでは『メイフラワー』という名前の毎年違ったペーパーフラワーが人々の上着に咲きます。
この『メイフラワー』は貧困の状況に置かれている子ども達の支援する活動の象徴で、日本における「赤い羽根募金」のようなものです。
「メイフラワー/Majblomman」は子どもが大人に販売して支援活動を行っている
日本の「赤い羽根」との大きな違いは、子どもがこの活動の意味を理解し、大人に対して
貧しい子ども達のために支援してほしい
と、子ども達がを街に出てメイフラワーを販売しチャリティー活動を行っていることです。
アメリカでも「レモネードスタンド」を開き、子どもがレモネードを販売。集めたお金を小児がん治療のために寄付するという
子どもによる子どもへの寄付活動
は日本でも有名ですよね!
「メイフラワー/Majblomman」チャリティーの参加モチベーションが高い理由
「貧困の子ども達に貢献」するだけでなく販売した「自分」や「所属チーム」にも10%ずつ還元されるってホント!?
日本円にして500円程度のペーパーフラワー。
収益の内訳は以下
- 地元のメイフラワー協会に送られ直接的な財政支援として使われる:40%
- 子どもの貧困のための啓蒙活動、研究の支援、子どものための地元団体への支援:40%
- 花を売った子ども自身:10%
- 花を売った子ども達が所属するグループ(クラスやスポーツクラブ):10%
に送られます。
直接的な支援では、
- 靴・洋服の購入支援
- スポーツなど習い事・夏休みの活動参加への補助
に充てられます。
また、上の内訳にもある通り、活動に参加することで、自分自身や、所属しているサッカーチームの遠征費用になったりもするので、子ども達のモチベーションも高いのでないかと思います。
この活動は1907年から始められ、子どもや若者の可能性を広げるための社会活動として根付いてきました。
12歳の少年が約6千600万円分のメイフラワーを売り上げ話題に!
今年は、このメイフラワーの活動を通じ、これまでの記録を更新した少年のことがニュースになっていました。

▲12歳のこの少年が、これまでのメイフラワーの記録的な売上を達成した特ニュースがスウェーデンでは大きな話題になりました。[from Rekordförsäljning av majblommor – Murhaf Hamid sålde för 5 miljoner | SVT Nyheter(スウェーデン国営放送Newsサイト)]
なんと、この少年1人で約6千600万円分(!)も売り上げたのだとか。
エチオピア人の両親のもとスウェーデンで生まれたMurhaf(ムラフ)さんは、街で大人にメイフラワー売ったほか、ソーシャルネットワークも活用しながら17日間で販売し記録的な売上高を達成したのだそうです。
子ども達は保育園時代から異文化の子どもを学ぶ
スウェーデンの人口の約20%はスウェーデンではない国や地域のバックグラウンドがある人達で、多くの保育園は多様なルーツを持つ子ども達が集まっています。
そのような子ども達が、自分達に関わる国や文化について紹介するようなことはよくあるのですが、世界の様々な国の子ども達がどのような家に住み、どのように暮らすのかを写真をみせながら先生が話をするようなこと保育園のアクティビティーの一つとしてありました。
外国について学ぶ時には、代表的な建物や文化に触れることをイメージしていた私にとっては、子ども自身が他の国の子どもを知るということが新鮮でした。
保育園児にとって、
同じくらいの年の子どもの日常の映像のほうが、全く知らない遠い世界のことであっても身近に感じることができるのだ
と納得しました。
また小学校3・4年生で国外について勉強する場面では、自分たちで国を選び、
その子ども達が、
- 学校に行けているのか
- 学校で給食はあるのか
- 仕事をしなくてはいけない子ども達がいるのか
など、 子どもの人権に関わるような問題にも触れる授業をしていました。
他の国を知るというだけでなく、様々な国の社会的課題についても学ぶということは、グローバル化した社会の一員として成長するときに必要な視点なのかもしれません。
社会科の課題にいつもワタシが苦戦(汗)
現地のスウェーデンの小学校に通う6年生の長女のクラスでは、普段の宿題は読書くらいですが、時々先生が家庭で議論するような課題をだします。
今週の社会科のテーマは
持続可能な発展のためのグローバル目標
日本でも知られているSDGsについてでした。
そして、課題は
『どのようにしたら貧しい子供たちがいなくなるか、 自分達にできることは何か』意見を述べる
というものでした。
今回もまた、難題が、、、
と思いつつ考えていると、娘は
今回はスウェーデンの社会のことだけじゃないから、お母さんもわかるでしょ?
と。
そうです、私は娘の社会の質問に対しては
スウェーデンのことだからお父さんか、おじいちゃんに聞いてくれ
と普段言っているのです。
小学生でも「自分のあたまで考え意見述べること」が当たり前に課題として出されるスウェーデンの教育
私が受けてきた日本教育とは違う、自分の意見を聞かれる問い。
私自身、スウェーデンの語学学校の時から正直苦手意識がありました…。
なので、毎回娘の持ち帰る課題にはちょっとした嫌な汗をかきます。
今回は、スウェーデン事で逃げられないと腹をくくり、一緒に貧しい子どもを支援している団体、UnicefやSave the Childrenなどの活動を調べ、その中で私たちが団体に協力できることがあるのかを娘と相談しました。
- 仕事がない
- 子どもに教育を与えられない
という理由でアフリカから地中海を超えて、命がけでヨーロッパにくる移民や戦争による亡命者の方々は私の職場にもおり、貧困問題は決して遠いところの話ではありません。
まとめ:子ども達も社会の一員だからこそ自ら社会を学び・考え・行動し「社会参加」することが大切
さらに、そのような危機的な社会情勢の中の子どもの貧困は解決を急ぐ問題ですが、
自分で意見を持ち、行動することができていなかった…
と、娘の課題を通して改めて気づきました。
社会問題は、一部の大人が議論し、解決をしていくものと考えがちです。
しかし、子ども達も社会の一員であり、差別意識も大人に比べ低いかもしれません。だからこそ、新しい発想で解決の糸口を見つけることができるかもしれません。
また、
平等で誰もが住みよい社会を作りたい
と、子どもの方が純粋に考えることも多く、子どもの貧困のような問題について、子ども達が学び、考え、行動することは、未来へ希望の持てる社会になるのではないか、と思います。
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
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- ウプサラ
2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。