スウェーデン流「クリスマス」&「アドベント」の過ごし方
寒くて暗くて長い北欧の冬だけれど…みんなが一緒に暖かな気持ちになる楽しいクリスマスシーズン!
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
スウェーデン人にとって1年で一番『心弾む時期』はクリスマス・イブが来るまでの準備期間である「アドベント(Advent)」シーズンです。
冬が好き
と答える日本人は少ないかもしれませんが、スウェーデン人の多くは、寒くて、白くて、楽しいクリスマスのある冬が大好きです。
楽しみを待ちわびること、喜びを分かち合うこと意味
について、スウェーデンでの「アドベント」。クリスマスシーズンの過ごし方を通して、みなさんにお伝えしたいと思います。
目次
- 暗い日々から明るい気持ちに変わる「アドベント」の開始日! クリスマスシーズン到来
- ロウソクに明かりを灯して家中にクリスマスの飾り付けをする「Fösta Advent(アドベント初日)」の朝
- クリスマス・イブの前日にツリーを用意するスウェーデン
- スウェーデンのクリスマスシーズンの定番は「ジンジャークッキー」&「サフランのパン」
- どの世代の人も一緒に歌い、喜びを分かち合う「アドベントフィーカ※(advent fika)」の時間。
- スウェーデンの伝統的なクリスマス行事「聖ルシア祭」
- スウェーデン人にとっての伝統的な「クリスマス・イブ」の過ごし方 夕食後にサンタクロース登場!
- クリスマス・イブの夜はツリーの周りでダンスするスウェーデンスタイル!
- スウェーデンでの暮らしを通じて感じる「毎年変わらない」ことの良さとは?
- スウェーデンのアドベント&クリスマスを通じて感じた『喜びを待ちわびる』豊かさ
- 質の高い生活に大切な5つの要素とは?
- 毎年定番行事は当日だけではなく『喜びを待ちわびる』時間も家族で楽しみながら味わってみよう!
アドベント(Advent)とは?
「アドベント」とは、ラテン語の
「来る・到来:Adventus(アドベントゥス)」
いう言葉からくる、クリスマス前の約4週間のキリストの降誕・到来を待ち望む「待降節」の期間を指します。
キリスト教のローマ・カトリック教会(西方教会)では、アドベントの開始日から公現日(1月6日)までがいわゆる「クリスマスシーズン」であり、一年間の行事の中でも特に重要な期間となります。
なお、アドベントの開始日は毎年変わり、11月30日の「聖アンデレの日」にもっとも近い日曜日からはじまります。
暗い日々から明るい気持ちに変わる「アドベント」の開始日!
クリスマスシーズン到来
冬の日照時間が少ないスウェーデン。
日に日に太陽の出る時間が短くなり、11月には学校帰りの3時頃ですら既に薄暗く、子どもが外にいるとまるで夜遊びをしているように見えてしまうので、私は少し心配になってしまいます。
雪が降れば白くて明るくなるのですが、まだ綺麗な雪景色にもならず雨や曇った日も多くスウェーデン人でさえ気持ちが落ち込むような時期です。
しかし、クリスマスから4週間前の日曜日(今年は11月27日でした)。
「最初のアドベントの日」がくると人々の気持ちはパッと明るくなります。
ロウソクに明かりを灯して家中にクリスマスの飾り付けをする「Fösta Advent(アドベント初日)」の朝
この、第一のアドベントの朝。
4本並んだロウソクの一本に明かりを灯し、そしてクリスマスの飾りを出し、家じゅうに飾り付けます。
すスウェーデンでのスタンダードは
- 窓に吊るす星
- 窓際に立てる光の屋根
- クリスマスの模様の赤いカーテン
です。
クリスマス・イブの前日にツリーを用意するスウェーデン
こちらの伝統ではクリスマスツリーは、クリスマス・イブの前日に用意します。
もちろん、アドベントの始めから飾るところもありますが、生のもみの木を飾る時は、切りたての香りのよいツリーをクリスマス直前の飾るのがやはりいいですね。
スウェーデンのクリスマスシーズンの定番は「ジンジャークッキー」&「サフランのパン」
おうちがクリスマス一色になると、次はクリスマスのお菓子作りが始まります。
星やツリーの型どりしたジンジャークッキーを焼くのは、子どもの大好きなことです。
クッキーを焼き始めると家中、スパイシーな香りに包まれ、さらにアドベントを感じることができます。
また、12月13日は「ルシア祭」で、ルッセカットという猫のしっぽの形の「サフランのパン」を食べる習慣があるので、これもアドベントになると家庭で焼くことが多く、サフランの良い香りがします。
見た目も、香りも、そして職場ではクリスマスソングも流れており、五感全部でアドベントを楽しんでいます。
どの世代の人も一緒に歌い、喜びを分かち合う「アドベントフィーカ※(advent fika)」の時間。
アドベントの期間は、友人や職場の人親戚とお茶することも多くこの時期は特に『アドベントフィーカ』といって、いつも以上にお茶の時間を楽しみます。
アドベントフィーカでは、グルッグというホットワインに干しブドウとアーモンドを入れたものを始めに飲みます。
その後、
- サフランのパン
- ケーキ
- ジンジャークッキー
- コーヒー
が定番です。
毎年、どこの集まりでもこのような定番のものでお茶をします。
※フィーカ(fika)に関する参考記事:
スウェーデンの伝統的なクリスマス行事「聖ルシア祭」
旧暦で冬至にあたる12月13日に行われる「聖ルシア祭」の朝には、白いリンネ着て、ろうそくを手にした子ども達が歌を歌います。
この時のルシアの曲はいくつかあるのですが、それは毎年変わらず、老人ホームに住む100歳を超えるおばあさんで、普段は話すことができない認知症の方でも、子どもの頃の長期記憶がよみがえり、子ども達と嬉しそうに歌いだします。
どの世代の人も一緒に歌い、喜びを分かち合う時間がこの朝スウェーデンのいたるところにあります。
スウェーデン人にとっての伝統的な「クリスマス・イブ」の過ごし方
夕食後にサンタクロース登場!
スウェーデン人にとっては12月24日がクリスマスのメインの日です。
この日の過ごし方にもスウェーデン人のしきたりや伝統があり、午後15時から16時はお茶をしながら、国営放送で流れるディズニーの短編アニメをを子どもも大人も一緒に観ます。
その後に、ユールブードJULBORDというクリスマスのブッフェをテーブルいっぱいに用意して、家族で夕食をします。
その後は、お父さんや、おじいちゃんが
ちょっと新聞を買いに近くの商店まで行ってくるよ
といって出かけた振りをして、サンタクロースの格好に着替え、プレゼントの入った袋を背負って、ドア鈴を鳴らし子供たちにサンタクロースとして出迎えられ、プレゼントを一人一人に配ります。
プレゼントには、
〇〇ちゃんへ、メリークリスマス、おばあちゃんより
と書いてあり、時々中身を想像させるような韻の踏んだメッセージが付いていて、言葉遊びを楽しんでいるようなこともあります。
クリスマス・イブの夜はツリーの周りでダンスするスウェーデンスタイル!
プレゼントを開けた後は、ツリーの周りでダンスをします。
私の初めてのスウェーデンでのクリスマス、パートナーの親や兄弟とそのパートナーと集まりクリスマスを祝いました。
子どもが一人もいないのに、大人だけでダンスが始まりちょっと戸惑ったことがあります。
職場の人にこの話をすると、5人中4人のスウェーデン人が
もちろん家族で踊る
と話していました。お祝いには音楽とダンスはつきもののようです。
スウェーデンでの暮らしを通じて感じる「毎年変わらない」ことの良さとは?
このように、毎年変わらない、アドベントとクリスマスを過ごします。
目新しい事や、バリエーションが少ないスウェーデン行事について、
毎度定番ね
と思ったこともありますが、変わらないことのよさも見つけ始めました。
喜びの時を思い浮かべるイメージに、皆共通のものがあるという良さです。
これは、
もうすぐクリスマスだね
という言葉から、楽しい時間を期待する気持ちを共感できることです。
全ての状況を説明しなくても、嬉しく、明るく暖かな雰囲気や気持ちを理解し合うことができるのです。
スウェーデンのアドベント&クリスマスを通じて感じた『喜びを待ちわびる』豊かさ
大人になると日々忙しく生活しており、少し先の楽しみをじっくり待ちわびるという時間も、気持ちもなかなかもてないかもしれません。
スウェーデンの家族は多くの場合共働きで、日々慌ただしい生活を送っていますが、大人もワクワクしてることを言葉に出して、子どもと楽しみを共有しています。
アドベントは、クリスマスまでの期間を楽しむ側面もありますが、クリスマスに大切な人と共にお祝いするひと時を、待ちわびる時間でもあります。
以前より連載にてお伝えしている通り、私は認知症専門看護師なのですが、仕事を通じた学びの中で、認知症を患った人も、質の高い生活(クオリティーオブライフ)を送り続けるられるためのケアについて多くの時間考えてきました。
質の高い生活に大切な5つの要素とは?
質の高い生活というのは、個々によって違うものですが、大事な5つの要素があります。
それは、
- 自己決定
- 希望・期待
- 充実感
- 信頼
- 寄り添う・共感
です。
この5つは、私たちの日常の『幸せ』にとっても大切なものです。
毎年定番行事は当日だけではなく『喜びを待ちわびる』時間も家族で楽しみながら味わってみよう!
特に、2020年から本格化した新型コロナのパンデミック。
コロナ禍&WITH(ウィズ)コロナの暮らしの中、様々なことが制限せざるを得ない状況になり、楽しい事への期待や、これまで当たりまえに寄り添えたことができなくなったために、多くの人が人生における大事なものを考え直すこともあったのではないでしょうか。
毎年来る、クリスマスやお正月。
当日だけ楽しむよりも、『喜びを待ちわびる』、お手紙やメールをゆっくりと思いを巡らせ書きながら、『大切な人との繋がりを感じる』時間というものを存分に味わってみてはいかがでしょうか。
また、『毎年行う我が家の定番』を作っていくと、子どもも自発的に準備ができ、親にとって準備の慌ただしさも減ります。
数年後には、
これが我が家の伝統だね!
と誇りのようなものを家族が感じることもあるでしょう。
さらに、50年後我々が高齢者になった時には、その定番がしっかりと刻みこまれ楽しい記憶によって、心を暖かくできることもあるかもしれません。
GOD JUL & GOTT NYTT ÅR!!(グード ユール & ゴット ニット オール)
=MERRY CHRISTMAS & HAPPY NEW YEAR!!
メリークリスマス、そして皆さまにとってよい年が訪れますことをスウェーデンよりお祈りしています。
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
- ウプサラ
2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。