中学生・高校生・大学生…思春期の子どもへの性教育★スウェーデンの家庭や社会ではどうサポートしている?[13〜19歳・ティーンエイジャー編]
シリーズ:子どもを狙う性犯罪から自分を守る 最終回
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
こんにちは! スウェーデン女王認定 認知症専門看護師/Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー長谷川佑子です。
日本でも感心が高まっている「子どもの性教育」。
私は日本及びEUの看護師免許を持ち、現在は、スウェーデンで多くの高齢者と接する看護師として働く2児のママでもある立場にあります。
そのため、スウエーデンの教育&子育てというトピックの中でも、特集として「スウェーデンの性教育」「人生100年時代のウェルビーングと教育」についてシリーズとしてお届けできたらと常々思ってきました。
今回は、特集でお届けしてきました「子どもを狙う性犯罪から自分を守る – ストップ!僕の私の体だよ!!」シリーズ最終回となります。
目次
- 子どもの未来が輝く「ウェルビーング」の学び…スウェーデンではどう伝えている?
- 子どもが大きくなれば子育ては楽になるのか?
- 思春期の子ども達はココロとカラダの変化にまつわる悩みを誰に相談すれば良い?
- ■思春期の子どもへのサポートその1: おうちでできること
- 10代に入ったらより一層子どもの気持ちを尊重しながら信頼関係を築いていく
- 大人がきちんと言葉で伝える ティーンエージャーにとっての「性交」の意味
- ■思春期の子どもへのサポートその2: 「合宿」「キャンプ」等お泊り行事の前に伝えておきたいこと
- カラダについてのルールはいつも同じ 「同意」なく体にふれることは良くない
- 性犯罪予防のためにも少しでも「違和感」を感じたらすぐに周囲に伝えることを伝える
- ■思春期の子どもへのサポートその3: 社会や専門家ができること
- 親の時代とも違う現代社会を生きる若者だからこそ「専門家」を頼るという選択肢を持つ
- スウェーデンでは子どもが13歳になると本人の承諾なしに受診記録の確認や受診予約ができないってホント?その理由とは…
- 子どもがティーンエイジャーの年齢に突入し一人の母として私が思うこと
- まとめ:未来が輝く「ウェルビーイング」への学びと対話を続けよう!
- 子どもを狙う性犯罪から自分を守る: 「Stopp! Min kropp!/ストップ!僕の私の体だよ」シリーズ・バックナンバー
- 参考・出典
子どもの未来が輝く「ウェルビーング」の学び…スウェーデンではどう伝えている?
今回の記事は、主にティーンエイジャー(13〜19歳/中学生・高校生・大学生)のお子様をお持ちの保護者様や学校関係者向けの内容になっています。
- 思春期の子どもとのコミュニケーション&対話のタイミングの作り方
- 信頼関係の築き方
- おうちでできる性教育(性・セックス・性犯罪予防)
- スウェーデンの「若者外来(わかもの・がいらい)」の存在とその意義
等、子どもの未来が輝く「ウェルビーイング」への学びとしてスウェーデンでの事例を交えながらご紹介できればと思います。
子どもが大きくなれば子育ては楽になるのか?
小さな子どもの問題は小さいけれど、大きな子どもの問題は大きくなる…
長女が保育園に行っていた頃は、職場のお茶の時間に
子どもが食べない
とか
決めた時間に寝ない
など、子育てあるあるを話していると年配の同僚が、
小さな子どもの問題は小さいけど、大きな子どもの問題は大きくなるからね。
と。
その頃は、初めての子育てということもあり、悩んでばかりで、子どもが大きくなればきっと子育ても楽になるなどと幻想をいだいていました。
しかし、今年13歳になる長女を前に、同僚の言った大きな子どもの問題というものがとても複雑で、親だけでは解決できないこともあるのではないか、と感じています。
思春期の子ども達はココロとカラダの変化にまつわる悩みを誰に相談すれば良い?
特に、
- カラダ
- ココロ
の成長著しく、大人への階段を上り始めているティーンエイジャーの子どもたちへの性教育と性犯罪予防。
心身の変化や悩みについて、親とのコミュニケーションも大事ですが、時には親ではない人に相談できることも子どもには必要だと思います。
■思春期の子どもへのサポートその1:
おうちでできること
スウェーデン式の「金曜日」は家族の特別な夜時間を過ごす★思春期になっても一緒に過ごそう! たくさん話そう!
スウェーデンでは、金曜日の夜は家で過ごすことを前提とした
『金曜のゆったり(Fredagsmys/フレーダースミィース))』
という言葉があります。
※Fredagsmys(フレーダースミィース)は、[fredag(フレーダーグ)=金曜日][mys(ミィース)=mysig(ミューシグ)心地良い場所・空間・時間]という2つの言葉をかけ合わせたスウェーデン語の言葉。
スウェーデンで暮らす人々は金曜日は仕事も少し早めに終わらせ、いつもより気分の上がる夕食を用意します。
子どものいる家庭は「金曜のタコス」といって、メキシコ料理のタコスを食べることも多いです。
日本の「土曜の手巻きの日」のようなもので、手の込んだ料理よりもみんなでワイワイとおしゃべりしながら食べられるというものがいいのかもしれません。
ちょっとスペシャルな金曜日の家族だんらんで継続的な対話時間をとる意義
そして、夕食の後は、家族でチップスを食べながら、いつもより遅くまでテレビを見たり、ゲームをして過ごします。
家族の形がいろいろなスウェーデンですが、家族みんな揃って過ごす時間をとても大切にしています。
子どもが小さな頃から、両親とも働いているのが当たりまえの社会ですが、父親も母親も、子どもに関心を示し、
- 学校生活
- 社会のことや
- 将来のこと
- 人生で可能なこと
など、子どもが10代になっても継続的に対話することを勧めています。
そのようなコミュニケーションによって、子どもが変化するカラダやココロについても構えることなく感じていることを表現する機会を持ち、一人で悩みを抱えてしまうことを避けることができるのかもしれません。
10代に入ったらより一層子どもの気持ちを尊重しながら信頼関係を築いていく
「あなたとコミュニケーションを取りたい」という姿勢も示していく
Socialstyrelsen というスウェーデンの厚生労働省にあたる機関が出している「子どもとの会話の指針」では、子どもに強要したり、プレッシャーをかけたりすることなく、
(親は)あなたとコミュニケーションを取りたい
という姿勢を示すことが10代の子どもには大切なことだとしています。
もし、子どもが親の質問に答えたくない場合には、その答えないことを尊重することも大事です。
尊重する態度から信頼関係が生まれることもあります。
しかし、放任するだけでなく、子どもからのサインを見逃さないためにも、そばにいる時間をとり、いつでも子どもの助けに応えられる距離でいることが大切です。
大人がきちんと言葉で伝える
ティーンエージャーにとっての「性交」の意味
スウェーデンのSave the Children(セーブ・ザ・チルドレン)は、10代の子どものいる親に対して以下の助言をしています。
好きな人との親密さやセックスは、楽しいものかもしれませんが、同時にいろいろな問題が起きやすい場面でもあります。
スウェーデンでは15歳以下は法律で性行為が禁止されているので、年齢によっては違法なことでさえあることを子どもに説明してください。
スウェーデンの子どもは小さな頃から、自分の部屋を与えられ、自分のベッドで寝ます。
さらに、
10代になると、子どもサイズから幅の広い大きめなベッドに買い替えることも一般的で、10代の子が異性を友達と自分の部屋で過ごすこともある
と、私が通った外国人の為のスウェーデン語コースで、現代のスウェーデン家庭についての授業で先生が話していました。
それを聞いたイスラム圏の国から来たクラスメイトは衝撃的な表情をみせていました。
これは、あくまでも最近の40〜50年間でのスウェーデンにおけることのようで、今の高齢者は子どもの部屋などなかったと言います。
子ども部屋のよい環境・悪い環境というのは親の価値観によってきまります。
自分の子どもがそのような個室を持っていなかったとしても、
クラスの子は個室を持っていて、自分の子が異性の家に遊びに行ったときにそのような環境にいる可能性もあるのだ
と、思うと我が子と『性やセックス』について話しをする必要性を感じます。
■思春期の子どもへのサポートその2:
「合宿」「キャンプ」等お泊り行事の前に伝えておきたいこと
同意もなく他人が体に触れることはよくないこと「ストップ! 僕の(私の)カラダだよ!!」
多くの子どもがサッカーなどのクラブで放課後スポーツを楽しんでいます。
そこでは、新しい友達ができ、指導する大人と出会うこともあります。
さらに、中学生くらいの年齢になると、泊まりで合宿をしたり、キャンプに行き自然を楽しむことも増えてきます。
カラダについてのルールはいつも同じ
「同意」なく体にふれることは良くない
普段の学校生活と違っても、
大人や友人が同意もなく体に触れるようなことはよくないことだ
と子どもに伝えておくことは、大事なことです。
たとえ練習の中で身体を支える、持ち上げるような場面があったとしても、毎回確認をとらなくてはならず、そのようなルールを守らない人がいる場合には、大人に相談するように言います。
性犯罪予防のためにも少しでも「違和感」を感じたらすぐに周囲に伝えることを伝える
「合宿」などのお泊りを含むイベントの際には「違和感」に対して声をあげることの重要性を事前確認しよう
特に合宿では、誰かに対して少しでも
「おかしい、へんだな…」
を感じ取ったら周囲に声をかけるように
と子どもにはっきりと伝えることが、性犯罪の予防につながります。
年上の友達や、指導者に対して、子どもが声をあげることは難しいかもしれません。
だからこそ、
- 「同意」というルールが社会にあること。
- それは誰であっても守るべきものだということ。
この2点を子ども自身が知っていることが大事だと思います。
■思春期の子どもへのサポートその3:
社会や専門家ができること
子どもがいつでも相談できる専門家による相談&サポートを行うスウェーデンの「若者外来(わかもの・がいらい)」の存在
街には若者が予約なしで行ける「若者外来(わかもの・がいらい)」というクリニックがあります。
そこでは、若者の
- 発達や精神的な問題
- 性疾患
だけでなく、性転換の専門機関で研修を積んだ、医師や看護師が
- 体についての質問
- セックスと人間関係についての質問
- 妊娠および性感染症に対する問題解決・助言
- 妊娠検査または性感染症検査
ココロやカラダの調子が悪い時はサポートを行っています。
親の時代とも違う現代社会を生きる若者だからこそ「専門家」を頼るという選択肢を持つ
- 親に相談しにくいこと
- 親でも答えが出せないこと
がティーンエージャーにはたくさん出てきて当たり前です。
さらに、親の時代とは、子どもが育つ環境も変わっています。
子どもがいつでも相談できる、専門家が近くにいることは、子どもに相談する人の選択肢が増えることでよいことだと思います。
スウェーデンでは、各個人がインターネットから自分の病院カルテにアクセスでき、閲覧や、急ぎでない相談を診療所へもできます。病院カルテは大きな病院も、かかりつけ医のいる診療所も同じシステムで統一されています。
スウェーデンでは子どもが13歳になると本人の承諾なしに受診記録の確認や受診予約ができないってホント?その理由とは…
子どもの場合には、産まれたときに個人の住民番号との紐つけされたカルテがつくられ、親が子どもの
- 発育
- 予防接種の摂取記録
- 医療機関の受診記録
を見ることができるのです。
しかし、子どもが13歳になると、親であっても子どもの承諾なしに、受診記録はおろか、受診の予約も見ることはできません。
13歳の子どもが親に相談することはもちろんできますが、自分の健康を自己管理することを学ぶと共に、親に知られず精神科を受診することや、性について相談することも可能になります。
子どもがティーンエイジャーの年齢に突入し一人の母として私が思うこと
長女が今年13歳になり、
親子であっても別な人間、人格であることを尊重し、私の価値観を押し付けるようなことなく、私の考える社会や人生におけるリスクや危険に子どもが耳を傾けてくれるような関係作りに時間とエネルギーを注ぐことが親である私のできることなのかな…
と感じているところです。
以上で、未来が輝く! ウェルビーイングへの学び よりよく生きていくための 『ストップ!僕の私の体だよ!!』シリーズは終了です。お付き合いいただきありがとうございました。
まとめ:未来が輝く「ウェルビーイング」への学びと対話を続けよう!
世界中どこの国で暮らしていても、我々親の世代がティーンエージャーだった頃と、子どもの育っている今の環境はとても違います。
さらに学校での性教育も性犯罪予防も、私自身習ったこともない人ので、どのように子どもに伝えればいいのかわからないことだらけでした。
しかし、助産師や女性クリニックで働いていた友人や、子育てをしている仲間に相談をするだけで、どのようなことができるのか少しずつ見えてみて、有益な情報を得る機会も増えました。
多くの方が、『性』について少し考えてみる、誰かと話してみることで、子どもにとって社会がよい方へ変わっていくことはあるのではないかと、このシリーズを執筆しながら思いました。
今回、シリーズでお伝えしてきた「スウェーデンで行われている性教育」にまつわる様々な内容が、お子様の輝く未来のために少しでもお役に立てたら嬉しいです。
子どもを狙う性犯罪から自分を守る:
「Stopp! Min kropp!/ストップ!僕の私の体だよ」シリーズ・バックナンバー
参考・出典
記事をお読み頂きありがとうございました!
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- スウェーデンから学ぶ性教育
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- ウェルビーイング
- 子供の権利
- 子供の人権
- 子供の性教育
- 性教育
- スウェーデンの教育
- 北欧の子育て事情
- 海外子連れ移住
- コミュニケーション力
- コミュニケーション
- 海外の教育制度
- スウェーデン子育て事情
- 海外移住
この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 長谷川佑子(はせがわ・ゆうこ/Yuko Elg)
- Glolea! スウェーデン子育てアンバサダー
- ウプサラ
2008年からスウェーデン王国、ウプサラで暮らしています。スウェーデン人の夫、3歳の娘の3人家族。森でのベリー摘み、湖での水遊び…日本とはちょっと違った子育てをしつつ、北欧文化を体験する日々です。 母親も外で働くのが当たり前の国での社会のしくみ、女性たちの生き方もお伝えしたいと思います。