移民が多いイタリア…人種差別がほとんどない理由とその背景
- 佐々木希世(Kiyo Sasaki)
- Glolea! イタリア子育て&生活エンジョイ・アンバサダー
「イタリア人」と言われると、男性はみんなジローラモさんのような、女性はモニカ・ベルッチのような感じ? と思う方もいらっしゃるかもしれません(いや、そこまでのステレオタイプはさすがにないか…)。
けれど、旅行者ではなくイタリアに住まう外国人は結構多いのです。
もちろん
老後を文化や食の豊かなイタリアで過ごそう−−
という、アメリカや欧州圏内からの移民もいますが、それ以外に移住して来る人もたくさんいる。「イタリア人」は多様なのです。
ということで、今回は「イタリアにおける人種の観点から見た多様性」について少しご紹介したいと思います。
目次
実は…イタリアは世界各国からの移民が多い国の一つです
アメリカとまでは言わないまでも、イタリアも意外と移民の多い国です。お隣のアフリカ大陸からはもちろんのこと、シリアをはじめ中東からの難民もいます。
また、これは来てから知りましたが南米から来た人も多い。南米はスペイン語圏ですから、スペインに行くのかと思いきやそうでもないんですね。
中国、インドをはじめとしてアジアからの移民も見かけます。近代史において大きく植民地を持たなかった国であるのに、これだけの国から移民が来るのは珍しい気がします。
人種差別がほとんどないイタリア
けれどそれ以上に驚くのは、イタリアでは人種差別がほとんどないこと。もちろん法令レベルでは分かりませんし、雇用などにおいては移民が不利になることもあるでしょう。
しかし、日常の生活レベルにおいて外国人に対して差別的な言動をとる人はほとんどいません。
アメリカは自由の国、移民の国と言いますが、人種間の溝が深いのは多くの人が知るところ。私もアメリカに住んでいた頃は、明らかに差別的と思われる言葉や態度に出くわしたことが少なからずありました。
しかし、イタリアではそういう不快な目にあったことは一度もありません。
海外移民や外国人の養子も多いイタリアの幼稚園
我が家のチビ達が通う幼稚園にも移民の子供はいますし、アメリカのように人種の違う外国人の子供を養子に迎えている家庭もあります。
けれどそのことが話題になったり、いじめの原因になったりすることはありません。
もっと言えば、意識して「公平にしよう」という空気すら感じません。
「みんな違って、みんないい」突出した個性を良しとするイタリア人気質
多様性は、ごく自然なこととしてそこにあるのです。
ですから子供達も「違う国から来た人たち」や「自分たちと外見や習慣が違う人たち」に出会っても拒否反応を示すことなく、当たり前のこととして一緒に話し、遊び始めます。
なぜなんだろうと、こちらに住まうようになってからずっと気になっていたのですが、イタリアの人たちと話す中で私なりに想像がついて来たのは2つの理由でした。
一つ目は「突出した個性」を良しとする、イタリア人気質なるもの。
子供時代から“違うことが喜ばれる”環境があるイタリア
イタリアでは
みんな違って、みんないい
が文字通り実践されていています。
- ユニークであること
- クリエイティブであること
- 人と違うこと
は尊重されるべき個性であり、そういった違いをあるがままに受け止めるのが当たり前。
これは幼児教育から顕著に見られる、イタリア人の姿勢です。
ですからその「違い」が外国人であることに起因しようと、誰も気にしないのでは、というのが私の推理です。
むしろ違うことは喜ばれるという環境が幼少期からあります。
例えば…我が家のチビが通う幼稚園でも折り紙を持って行けばクラス全員で作品づくりが始まりますし、文字や言葉、食事時のマナーなど違う文化やバックグラウンドにに純粋に興味を持つ…そんなマインドセットを持てるような自然な雰囲気と環境があるのです。
イタリアの長い歴史の中で育まれてきた多様性への寛容な心
もう一つはイタリアの歴史にあります。確かにイタリアは、イギリスやフランスをはじめとする他のヨーロッパ諸国のように、近代において長期間にわたり大きな植民地を持ちませんでした。
しかし。もっと、もーっと歴史をさかのぼったローマ帝国時代にはヨーロッパと北アフリカのほとんどは、帝国の植民地だったことは皆さんご存知ですよね。
移民やそれに伴う自国文化の多様化は、極端に言えばイタリア人はこの頃に経験済みなのです。
ですから一口に(在来の)イタリア人と言っても、抜けるような白い肌に背が高く金髪碧眼の人もいれば、がっしりとした体型で肌が浅黒く黒髪に黒い瞳の人もいます。我が家の隣人はシチリア出身で、エキゾチックな顔立ちのおじさんなのですが、本人曰く
アラブ人の血がどこかで入っているのさ
と言います。
そして面白いことに長い歴史を持つイタリアの人々は、中世くらいのことなら、まるで昨日のことのように語ります。
ローマ時代までさかのぼるとさすがに昔のことなのでしょうが、「パクスロマーナ(ローマによる平和)」に誇りを持っていることは話から伺えますし、それが国にもたらし、今に引き継ぐ多様性への寛容を当たり前と捉えているのです。
こちらに引っ越して来る前は、ヨーロッパと聞くと「歴史と伝統が支配する保守的な社会」というイメージがありましたが、ことイタリアに限っては多様性への寛容さは嬉しい驚きでした。
食習慣に限ってはあんなに保守的で、絶対「イタリア式」を変えたがらないのに・・・不思議なものですねえ。
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 佐々木希世(Kiyo Sasaki)
- Glolea! イタリア子育て&生活エンジョイ・アンバサダー
- ミラノ
14年8月に、イタリアはミラノに居を移す。2人の子供達を追いかけ回しながら、日本とは違う時間の流れの中でのイタリア生活を満喫中。学生時代の専門だった美術をはじめ、食事・お酒を愛する身には最高の住環境! 子育て周りをはじめ、そんなところもご紹介したいと思っています。著書『「半径5メートル最適化」仕事術 おしゃべりな職場は生産性が高い』好評発売中!