バイリンガル育児、子どもの頭の中はどうなっている?アメリカのプリスクールで実践されている”正しい英語”レッスン方法とは?
- 善家美緒(Mio Zenke)
- Glolea! 世界の子育て取材中!アメリカ子育てアンバサダー
目次
アメリカ・プリスクール事情③ 〜Early Educationの現場から〜
Glolea! 世界の子育て取材中!アメリカ子育てアンバサダー善家美緒です。
昨年の9月から、2歳の娘がアメリカのプリスクールに通っています。毎日プリスクールに通っているおかげで、娘はさまざまなことを吸収し、特に英語はどんどん上達しています。
「アメリカのプリスクール事情」連載3回目は、バイリンガル育児真っ最中の娘の“頭の中”と、プリスクールで実践されている“正しい英語”を身につける方法についてお伝えします!
バイリンガル育児真っ最中!2歳の娘の頭の中はどうなっている?
プリスクールに通い始めて3ヶ月。娘は、英語での問いかけにも「Ya!/Yes!」「No!」で反応できるようになり、自分で三語文(I drink milk. I hold box. …など)を作って話すようになってきました。
1歳3ヶ月でアメリカに来て、今、娘は2歳6ヶ月。ちょうど、生まれてから半分を日本で、半分をアメリカで過ごしたことになります。
生まれたときからずっと日本語を聞いて育ったとはいえ、まさに言葉の発達が進む時期に渡米したこともあり、今、娘の頭の中は英語でいっぱい。
わたしが日本語で質問しても、英語で返事をする/英語の単語・文章で話しかけてくるという状態です。
寝言も
Mommy…Mommy…
Funny…
など、完全に英語です。
これでは、バイリンガルどころか、英語のネイティブになってしまう! 英語が第一言語になってもいいけれど、日本語もある程度きちんと話せるようになってほしい! ということで、少し前から、努めて日本語の絵本を読み聞かせ、家では極力日本語で話しかけるようにしました。
そして、最近、娘の反応が少しずつ変わってきたのです。
ある日のプリスクールのお迎えで
今日はプリスクールで何したの? お歌を歌ったの?
とわたしは娘に日本語で聞きました。
以前は日本語で質問しても、じっと顔を見てくるか、たまにうなずくか、という感じだったのですが、この日は、
I sing song!
と答えてくれたのです。
日本語で聞いて英語で返事をしたことには変わりないのですが、“日本語で聞いた内容に合わせて英語で返事をした”ことはこれが初めて。
娘の頭の中には、しっかり日本語が定着していて、周囲が英語環境だから出てくるのが少ないだけだ! とわかり、とてもうれしく思いました。
それ以来、この”日本語で質問→英語でその内容に沿った文章を作って返事をする”ことが多くなりました。
たまに、思いだしたように
ゴーミー!
と言って、ゴミをごみ箱に捨ててくれるようになったり、少しずつ日本語も出始めました。(なぜ「ゴミ」・・・?と思いますが。笑)
英語だけになってしまったかと思っていた娘の頭の中では、英語も日本語も同じように共存していました。
英語を話す人には英語、日本語を話す人には日本語、としっかり切り替えられるように、引き続き両方伸ばしていきたいと思っています。
魔法の言葉「Please!」と「Thank you!」 プリスクールの“正しい英語”レッスン方法とは
娘のクラスは2歳のクラスなので、まだそれほど言葉が出ないお子さんもいれば、かなり話すお子さんもいます。
先生たちは、無理強いはせずに、自然にきちんとした英語が出るように、子どもたちを導いています。
例えばランチやスナックタイムのとき、ミルクやお水のおかわりをほしい子どもたちは、口々に
Water! Milk!
と言います。黙ってコップを出す子どもも。
そんなとき、すかさず先生は、
Water, please!
Milk, please!
と、please を語尾に付けて言い直してあげるのです。
単語だけを言っても意味は通じますが、単語を言えることがプリスクールのゴールではありません。
きちんとpleaseを言えることが、日常会話として“正しい英語”なのです。
おもちゃの取り合いをしたときは、子どもたちに“言葉で解決させるチャンス”となります。
まず先生は、
Use the words, please / 言葉で言おうね
と声をかけます。
Gently touching please. / 優しくね
You can share it with him/her. / お友だちと一緒に遊べるね
Say, “Please”. / ”Please”って言ってね
と子どもたちの間に入り、絶え間なく話しかけ、行動(引っ張ったり、押したり)ではなく、言葉で解決していくようにサポートします。
そして、おもちゃをお友だちに渡せた子どもには、とびきりのスマイルで
Thank you for sharing!
と声をかけます。
子どもたちは「Thank you!」と言われるのが大好きで、とても誇らしそうな、照れくさそうな顔をします。
プリスクールでは、こうした、気の長いやり取りをずっと続けていくことで、子どもたちは自然と、「自分のしてほしいことがあるときは”Please”を言う」「うれしかったら”Thank you!”と言う」という“正しい英語”を身につけていくのです。
バイリンガル育児を実践されているご家庭でも、参考にしたいポイントですね。
「Parents teacher Conference」で知る娘の英語習得状況
11月に、クラスの先生とわたしたち家族で行う「Parents teacher Conference」がありました。
これは、日本でいう個人面談のようなもので、先生と家族がスクールでの様子や子どもの発達などについて、ポートフォリオを使って詳しく話し合う機会です。
ポートフォリオは、
- Social-emotional /社会性の発達上の感情能力
- Physical /身体能力
- Language /言語能力
- Cognitive /認識能力
- Literacy /読解・記述能力
- Mathematics /計算能力
という項目に分かれていて、それぞれの分野ごとに子どもの写真と先生のコメントが記されています。
各家庭1時間ほど時間を取ってもらえるので、このポートフォリオに沿って、家ので様子や家族からの今後の要望、心配なことなどをどんどん先生に伝えることができます。
このConferenceで、わたしは先生に、
娘は先生やお友だちの英語を聞いて理解しているのか、それとも周囲に合わせて行動している段階なのか?
感情にまつわる英語がなかなか出てこないので本人がストレスを感じているのではないか? 何かできることはないか?
という相談をしました。
最初の質問に対しては先生から、娘は先生やお友だちが話した英語をかなり理解していて、「例えば、ランチの後にお皿を捨てて、と言ったら、ちゃんとごみ箱に入れるなど、指示したとおりに行動できる」とのことで、リスニングは問題ないようでした。
2つめの質問は、プリスクールのお迎えでよく目にする“おもちゃの取り合い”を見て感じた疑問です。
おもちゃを取られてくやしい、悲しい、怒っている、などの感情をまだ英語で表現できないため
Mine! Mine! / わたしのだよ!
と言ってただ泣くだけの娘を見るのは親としては少しつらいものがあったからです。
でも先生は、娘は、今お友だちに追いつこうと一生懸命吸収している段階であり、
Whatever she is able to speak, she seems to enjoy saying those words, and the words are clear!
と言ってくれたのです。
親としては、円滑にコミュニケーションを取れるように、娘の英語が早く上達するといいと思っていましたが、先生の、
どんな単語や言葉でも、彼女は話せることをとても楽しんでいるのよ!
というお返事にハッとさせられました。
どの程度話せるかはその子どもそれぞれ。何より、子どもが英語を話すことを楽しんでいることが最も大切だと気づかせてもらえる、とても有意義なConferenceでした。
まとめ:“言葉が通じる”ことは子どもにとって根源的な喜び…バイリンガル育児で大切にしたいこと
プリスクールの先生とのConferenceや、最近の娘の英語と日本語の使い分けをとおして、わたしは、言葉が通じることは、子どもにとってとても嬉しいことなのだと、改めて気づきました。
日本でバイリンガル育児を実践されているご家庭でも、ただ単語を教えるのではなく、「教わった英語のフレーズを使ってみたら、外国人のお友だち・先生と本当に会話ができた!」という“英語の喜び”を、ぜひお子さんに体験させてあげてほしいなと思います。
たとえ今はまだそれほど英語が出てこなくても、英語が通じた”という喜びは、子どもの記憶の中にしっかりと残り、後々の英語学習にも役立つことと思います。
それではまた次回! See you soon!
記事をお読み頂きありがとうございました!
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この記事を執筆したGlolea!アンバサダー
- 善家美緒(Mio Zenke)
- Glolea! 世界の子育て取材中!アメリカ子育てアンバサダー
- ワシントンD.C.
2014年よりワシントンD.C.在住。渡米するまでテレビ局のディレクターとして、教育・教養分野の番組を制作。夫の海外転勤に伴い退職、”世界の子育てを取材するジャーナリスト”を目標に、2歳の娘とアメリカ生活奮闘中!趣味は旅行、芸術、読書。ロシア文学、モネ、尾形光琳、冬のドイツをこよなく愛しています。